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ニッケル・クロム合金の問題点についての国会質疑

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/126/0410/12604260410009a.html

公明党 薮仲義彦


第126回国会 決算委員会 第9号

平成五年四月二十六日(月曜日)







○貝沼委員長

 次に、薮仲義彦君。

○薮仲委員

 私は、厚生大臣に医療行政の各般にわたって質問をさせていただきたいと思うわけでございます。

 きょう質問するに当たりまして、ちょっと今まで厚生省にどんな質問をしたかなと思って資料を調べてみました。一番最初に質問したのが昭和五十六年、亡くなられた園田厚生大臣のときからずっと今日まで歴代の大臣に質問をしてまいりました。その主な内容は、歯科の不採算、それから歯科材料の安全性、有用性についてです。今、国民の多くの方は恐らく厚生省、丹羽厚生大臣のもとで行われる歯科行政、国民の口の中に入ってくる金属材料がまさか危険な材料は入ってこないでしょうねと期待していると思うのです。私も初めて質問したときそう思いました。当時の行政側の答弁、今読んでみまして、よくもと、こういう思いがあるわけでございますが、私はそのときはまだ余り専門的な知識がございませんでした。それから半分疑問もございまして、愛知県の愛知学院大学歯学部長の平沼先生の教室を訪ねました。東京医科歯科も訪問しました。補綴の田端教授、毒性学の専門の佐藤温重教授の教室も訪ねました。今歯科医学会長をやっておられます関根先生の東京歯科にもお伺いさせていただきました。諸先生から、行政の言ったことが正しいのか、果たしてそこに問題がなかったかどうかつぶさに勉強をし、それから十年間立て続けに質問をさせていただきました。今私はその十年の思いを込めて大臣にきちんとした結論をいただきたいと思ってきょうは質問させていただくわけでございます。

 その間に思い出に残る幾つかの事柄がございました。五十四年当時、まだ厚生省の根幹となす薬事法には安全性という言葉がございませんでした。私は地元の方から、キノホルムによる、いわゆる整腸剤ですが、スモンの問題を提起されておりました。当時の厚生大臣橋本大臣に薬事法に安全性を入れるべきなどの我々の主張に橋本大臣は同意しました。改正された薬事法には、大臣先刻御承知のように、第一条にその目的が書いてございます。今問題になっております医療用具はもちろんのこと、薬剤、化粧品に至るまで有効性、安全性がきちんと第一条の目的にうたわれておりまして、国民に提供するその材料については安全性と有効性が最も重要であるとうたわれた経緯がございます。

 それ以来私は歯科材料の安全性の問題とずっとかかわってきたわけでございます。が、特に納得いかないのは、昭和五十七年大分県で、後ほど大臣に資料をお渡ししますけれども、大分県でニッケルクロムの不正請求がございました。ニッケルを使用しながら金パラで請求したという不正であります。この事件が起きたとき厚生省はどういう態度をとったか、私は今でも無念の思いがございます。歯科材料を保険に導入するということはどういうことか。すべての国民の口の中に、専門家が使わないでくれという材料が全部入ってしまいます。これは非常に危険なことであります。そこできょうはその問題を集中的にやりますけれども、その前に、

(略)

○薮仲委員

 きょうは労働省並びに科学技術庁からもお伺いしたいのですが、後ほどお伺いすることとして、ちょっと次へ進めさせていただきますけれども、ここで先ほども申し上げましたけれども、私は歯科の問題に入りたいと思うのでございます。

 歯科の問題に入る前に、厚生省の安全性に関する御認識をきちっと確認をしておきたい。先ほど薬事法のことを申し上げました。この薬事法の第一条は「この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具に関する事項を規制し、もってこれらの品質、有効性及び安全性を確保することを目的とする。」これが第一条でございます。

 我々の身の回りにあります医薬品とか医療用具、これは安全性について十分この法律の適用を受けてくるのだなと私は信じておる一人でございますが、確認の意味で伺っておきますけれども、医薬品、医療用具、これの安全性については特に厳格でなければならないと思いますけれども、厚生省のこの安全性に対する認識について確認をしておきたいと思います。いかがでしょうか。

○市川(和)政府委員

 ただいま先生御指摘のとおり、昭和五十四年の薬事法の改正によりまして、薬事法の中に、品質、有効性と並びまして安全性の確保ということが入ったわけでございます。私どもといたしましては、もちろん品質、有効性と並びまして安全性の確保ということが非常に大事なことであると考えております。

○薮仲委員

 済みません。これをちょっと質問の前に渡したいのです。これを委員長と大臣に一部ずつ渡してください。

 大臣、ちょっとこれは古い記事なものですから、まあ局長はもう御承知のことでございますからお渡ししませんでしたけれども、これは見出しをごらんになっておわかりのとおり、「歯科医が”集団不正受給” 百人で五億円以上 大分県で発覚安い材料で差額取る 組織ぐるみで?」。

 二枚目、「反省ゼロ開き直る」、これは毛利という方が大分県の歯科医師会長、この方は当時の日本歯科医師会の専務理事です。「みんなやっている事」安心して請求せよ」。

 三枚目、「歯科医不正二百億円にも 材料すり替え全国で 生産量の三倍”使った” 金銀パラジウム合金 保険差額稼ぎ裏付け」、最後のところには「厚生省も監査急ぐ」、これが先ほど申し上げました大分県のニッケルクロムの不正請求でございます。これは明らかに不正請求なんです。ニッケルクロムはまだ当時保険に導入されていなかったのです。ですから、ニッケルクロムを保険材料として使うことはあり得ない。ところが、この大分県の場合は、歯科医師会長がむしろ開き直って、使えというような発言であります。

 これが私が先ほど申し上げた歯科材料の安全性について、また発がん性について、がんについてなぜ伺ったかというと、このニッケルクロムは専門の先生方にお伺いすると、薬事法に言う安全性、有効性に最ももとる材料じゃないかな、こう思うわけでございます。

 これが導入されたとき、臨床の先生も本当に心を痛められた。私の周りにも数多くの歯科の先生がいらっしゃいますけれども、本当に心を痛められました。私は、この問題がどうしてこんなになったのか、先ほど申し上げた各大学へ参りました。特に、この鋳造用ニッケルクロムというのは、大臣、御承知のように、歯にかぶせるものですね、総義歯であるとか歯にかぶせるもの、これが欠損補綴歯冠修復といって、欠損したところへ義歯を補ったり金属冠をかぶせたりします。こういうものが補綴の材料ですが、今の歯科治療の大宗を占める大きな治療方法でございます。この鋳造用ニッケルクロム合金が保険に導入されたことで専門学会の先生方は非常に心を痛めました。

 しかも、保険に導入されるということは、先ほど申し上げましたように、全国の臨床の先生が全部使っていいわけです。そうしますと、全国民の口腔、口の中に入るわけです。

 このことについて、この補綴学会、いわゆる先ほど申し上げた、今歯科医学会がございますけれども、会長は関根先生ですが、そこの中に幾つかの専門部会がございますが、その中に補綴歯科学会というグループがございます。そこには有名な先生方が数多くいらっしゃいます。先日、後ほど大臣に聞きますけれども、NHKのテレビに放映された愛知学院大学の歯学部長平沼先生もこの当時の補綴学会会長でした。

 それで、この問題、私は平沼先生にはきょうのために数日前もお会いしていろいろと懇談をさせていただきました。それを踏まえてきょう質問するわけでございますけれども、この補綴学会の学術大会を開きました。歯科材料というのがどういう基準で導入されるのだろう。ある日突然保険に導入されたわけです。それじゃ、歯科材料について一体どういう安全の基準があるのだろう、一体だれが審査するのだろう、ここが重大な問題なんです。

 これは大臣、きょう委員会では意を尽くせませんが、どうか私の意のあるところをお酌み取りいただいて、帰られたらいろいろな関係の方の御意見を聴取していただきたい。

 今厚生省が歯科材料を承認するときにJISの規格というのがあります。ジャパニーズ・インダストリアル・スタンダードです。これは御案内のように、日本の工業標準化法によってできた法律です。これは私もJISの工場を承認を取った経験がございます。その工場で同じ品質の製品がつくれるということが基本にあります。例えば合金ならば、何が何%、何が何%、一つのロットの製品は均一の製品ができてくる。そうしますと、JIS認定工場になる。今歯科で採用しているのにJISがあるのです。

 JISは、大臣、御承知のように当然通産あるいは厚生省も共管の大臣です。それじゃ、JISの規格というのは、今申し上げましたように、これは工業標準化法ですから安全については一切関係ないのです。安全というのは別の次元なんです。ですから補綴の先生が心配なさったわけです。安全については別のきちんとした基準が必要です。しかも、口腔内に入れる義歯にせよ鋳造冠にしましても、長時間装着します。そうしますと口腔内の酸によって溶けできます。これが内臓に蓄積されます。こういうことを踏まえて、加工中の粉じんであるとか溶出であるとか厳格な安全審査をやって、本当に安全だということが証明された材料を入れなければならないのです。

 しかも、大臣、後ほどもこれを聞こうと思うのですけれども、歯科材料の中で本当に前臨床試験、いわゆる動物実験あるいは臨床試験として試験を経た材料であるかどうか。ちょっと聞いてみましょうか。ニッケルクロムは前臨床試験をやりましたか。やったかやらないかだけ答えてください。

○市川(和)政府委員

 ニッケルクロムが我が国で

○薮仲委員

 やったかやらないかだけ答えてください。

○市川(和)政府委員

 失礼しました。  JISが制定されました当時は前臨床試験というものは行われておりません。

○薮仲委員

 今もやってないのですよ。

 問題になったときも、平沼先生はこう言っているのです。大臣、これは私が当時の業務局長に、ニッケルクロムには何ら基準がないじゃないか、基準をつくれ。業務局は慌てて当時の補綴学会会長平沼先生に検討依頼の書面を出したのです。正式には厚生省薬務局審査課が出したのです。その件に関する答弁に書いてあるのです。「専門学界に抄いて金属学的および生物学的にみた前臨床試験に因って先ず基礎的な安全基準を設定すべきである。」ニッケルクロムについてどうですかというときに、これは昭和五十九年一月三十一日に導入されたが、厚生省は、私が委員会でやるものですから慌てて基準をつくったのです、たった一つだけ。あとはできていないのです。鋳造用ニッケルクロム冠たった一つできただけですよ。このとき補綴学会は、まず前臨床の安全基準を設定してからおやりなさい、それからですよと言われているのです。臨床試験もやらないで入ってくるのですよ。

 それで、大臣、きょうはちょっと長くなりますけれども、ここで平沼先生初め歴代の補綴学会の会長さんが無念の思いで書いた本があるのです、国民のために。これは日本補綴学会の昭和五十九年十二月、二十八巻特集号です。歯科材料はどうあるべきか。今の歯科診療、そして国民の健全な医療のためにこうあってほしいという悲願にも似た研究論文ですよ。先ほど申し上げた佐藤温重先生も入っています。田端先生も平沼先生も関根先生もみんな入っています。そこで、こういう安全基準をつくり、また導入についてはこうやってほしいというところが書いてあるのです。この中をちょっと読ませてください。「日本補綴歯科学会会長平沼謙二 はじめに」という論文です。

  この”補綴用材料”は歯科独特の材料として、技工作業を経て口腔内に装着され、適切な形態と機能回復をはかる補綴物となる歯学の分野で最も特色のあるものである。そこで、長期にわたり口腔の健康を保持する安定した材料が要求されることになる。

 口の中に入りますと、これは完全に人工臓器になるのです。心臓やペースメーカーなどと同じように、これは完全に人工臓器として口腔の中に入れられて機能を果たしていかなければならない。

 そこの研究の中でこういうことがあるのです。「ニッケル・クロム合金の臨床的評価」。ニッケルクロム合金を果たして歯科医師が使っていいかどうか。この研究をなさったのは東京医科歯科の田端先生、井上先生、東京歯科の羽賀先生、日本歯科大学の横塚先生。これは先生方の名誉のために名前を挙げたのです。ちょっとここを読みますから。

  昭和五十七年十二月末、全く突然にニッケル・クロム合金を鋳造歯冠修復用材料として保険診療に採用することが中央社会保険医療協議会において決定された、後に述べるごとく、鋳造修復用合金としては種々問題が指摘されていた金属であるだけに、高度に専門的な判断を要するニッケル・クロム合金の採用については、専門学会である補綴学会に事前に諮問があって然るべきだと考えるが、実際には中医協での決定の直前に保険導入に同意して欲しい旨の電話が日本歯科医師会から学会長宛にあったとのことである。

 これは許可したのが十二月二十九日ですよ。これで、しかも即答を求められるという慌しさであったので、三谷学会長は取敢えず常務理事の範囲内で意見をとりまとめ、「ニッケル・クロム合金の保険採用には同意できない」との回答を行った。庶務担当の横塚教授を通じて学会長から意見を求められたのは、たしか歳末も押詰った十二月二十六日、二十六日に問い合わせて二十九日、三日間で中央薬事審議会でやったんです。この直前に今言った大分のニッケルクロムの不正導入があったのです。ここに書いてあります。

 後に聞いたところでは、同様趣旨の電話が理工学会長にもあったとのことである。そして急遽二十九日に保険導入が決定されたのである。ここではこのような全く唐突な保険導入を巡って巷間種々伝えられている真の動機などについては立入らないがこれは、今言った大分の不正請求があって、ばたばたばたと導入されたのです。ですから、巷間言われているというのは、我々政治家ですからはっきり言いますと、これで刑事事件になりそうだ、全国に広がりそうだ、抑えるためにこれは保険に入れちゃえ、そうすれば犯罪人が出なくて済むということです。

 この本には、

  ニッケル・クロム合金の保険導入について学会の意見は、適合性、硬さ、生体反応、高温鋳造、口腔内操作性、その他の問題があるので、なお検討を要する。したがって金銀パラジウム合金に準ずるものとしての保険導入の時期に至っていない

しかも、

  ニッケル・クロム合金の保険導入に対する学会の意見は、いささかの疑念を挾む余地なくきわめて明快である。保険導入の時点において、学会がこれに賛成であったことなど全くなかった

 これに対して、私に対して、後ほどやりますけれども厚生省の局長は、学会が専門学会の意見を聞いて賛成したと会議録で答弁しているんですよ。私は当時わからなかった。今になってわかった。そんなことはない。学会は賛成してない。しかも、この先生方の結びとしてこう書いてあるのです。

 私たちが臨床的視点からクラウン・ブリッジ用合金としての必要条件(鋳造体の適合性、鋳造性および研磨・研削性)を検討した結果、ニッケル・クロム合金は、会合金はもとより金パラジウム銀合金にも臨床的に必要な性能において劣ると判定され、この結論はニッケル・クロム合金の保険導入に際して表明した学会見解と一致する。すなわち現状においては、ニッケル・クロム合金は、適正なクラウン・ブリッジ用材料とは認められないという結論である。

  以下に結論の要点をまとめておく。

 一、ニッケル・クロム合金では、適合のよい鋳造体を得にくい。

 二、鋳造性が悪いので辺縁の適合が難しい。

 三、咬合、接触点の調整に時間を要し、鋳造冠の除去はきわめて困難である。

 四、ニッケル・クロム合金は、金合金、金パラジウム銀合金と比較してきわめて使いにくい材料である。

 しかも、これは恐らく大臣にも行っておると思いますけれども「ニッケル・クロム合金の毒性」、それで東京医科歯科大学の佐藤温重先生が、

  ニッケル・クロム合金は他の歯科材料と同様に前臨床段階で体系的安全性試験が行われておらず、

と言うんですよ。

 その毒性に関する知見はきわめて少ない。しかし、この合金に原因するアレルギー、よくテレビなんかでやりますね。

 アレルギー、歯肉刺激症状などの為害作用が報合され、また、この合金の成分金属が貴金属合金のそれらに比較して明らかに毒性が強いので安全性について論議しなければならないというのがこの佐藤温重先生の見解でしょう。

 結論だけ読みます。「むすび」、「ニッケル・クロム合金は、」「耐蝕性の不良な合金では安全性に問題がある。」これは発がん性について書いてあるのですが、

  ニッケル・クロム合金の成分金属のうち動物実験で発癌性が証明されている金属は、Be、Co、Cr、Cu、Mn、Mo、Ni、Znなどであり、また疫学的にヒトでの発癌性が明らかになっているものに、Be、Ni、Crなどがある。これらの金属は、細胸の腫瘍化を開始する作用と、腫瘍を増強化する作用とがある。

そして、

  溶出金属量は微量であり体内に吸収される金属量は少ないので、ニッケル・クロム合金は安全であるという考えがある。しかし、毒性は濃度の関数であるばかりでなく時間の関数であり、濃度が薄くても長い時間使えば毒性はふえできますよということです。

 ニッケル・クロム合金の慢性毒性試験を実施し、微量長期摂取の安全性を確認

しなければならないというのが先生の結論なんです。しかも、

 ニッケル・クロム合金のみならず、歯科材料は前臨床試験により安全性が保証されたものについて、小規模の臨床試験を行い、既存の歯科材料と比較し優れた材料を選別し、一般臨床に使用することが、医の倫理からして必要であろう。既存の補綴材料と比較しニッケル・クロム合金は安全性の優れた材料とはいえない。 しかも佐藤先生が何を言われたかというと、いわゆる毒性陽性の限界を論議するけれども、そうじゃない。口腔内に入れるような金属材料は、この材料は毒性がありません、毒性陰性を証明しなさい、これが毒性学の専門家の佐藤先生の結論なんです。

 しかも当時、昭和六十三年九月に、今度は補綴学会長はかわりまして津留会長さんですが、厚生大臣の藤本厚生大臣にこう言っておるのです。

    鋳造冠用ニッケル・クロム合金の健康保険診療導入について

  現在、健康保険診療に導入・使用されている鋳造冠用ニッケル・クロム合金について、本学会はその導入に際して、国民歯科医療の向上をはかる上から、また種々な臨床適応の面から極めて適切さを欠き問題のあることを関係機関に指摘した。

以下ずっと書いてあるのですが、

 国民への歯科医療については、国家の保証する医療体制に則して良質な可及的に高度な歯科医癖を実施するよう努力すべきことは云うまでもない。

国民のために良質な医療を施したい。

  その一環として、良質の歯科医療に対して、また正しい歯科医療の方向づけに対して鋳造冠用ニッケル・クロム合金の導入、使用は適切さを欠くものである。現在

いいですか、大臣。

 全国二十九の歯科大学、大学歯学部の臨床教育には鋳造用ニッケルクロム合金は理工学的性質や操作性、適合性、安全性などに疑義があるので全く使用されていないのが実態であり、使ってないんですよ、大学でニッケルクロムを。こんな悪い材料を使うか。仮に大臣の口腔にニッケルクロム合金が入っていれば、それを取り外そうとする臨床医が苦労するのです。ダイヤモンドバー二、三本使わないと取れない鋳造冠でもあるのです。それほど材料としては悪いんですよ。しかもその粉じんば非常に危険なんです。

  鋳造冠として咬合、下顎位を保持し、咀嚼などの機能を回復するためには金パラジウム銀合金以上の金属を使用することが、わが国の良質な歯科医療としては望ましいことである。

  なお、アメリカ、欧州など先進国においても鋳造冠用としては使用されていない事実をみても、先進国では使ってないんですよ。なぜ日本が使うのですか。こんなのはもう材料のない三十年代で終わりだ、この論文の中に書いてあります。それをあの大分県の不正請求から厚生省は、それを糊塗しようとして保険に入れたのです。しかも臨床試験なしです。人体実験じゃないですか。

 このような経過で学会の意見は何ら取り上げられることなく今日を迎えた現状は極めて遺憾である。

  以上、学会としてはかねて別紙資料の見解を公表し、問題を指摘して来たが、ここで再度鋳造冠用ニッケル・クロム合金の保険医療への使用を中止すると共に削除方を強く要望する。

 ここまでまじめな先生が言って、今言ったように薬事法は安全性と有効性なんです。しかも歯科の先生方も、安全であり使いやすい、操作性がよくて患者のためになるいい材料を使いたい。毒性学の専門の先生は、何であれニッケルクロムについては、いい材料ではない、発がん性も証明されておる。これをなぜ保険から抜かないのですか。しかも、入れたときには加算点数ですよ。百六十点も加算して、私の追及で加算点数は現在ゼロになっていますのでも入っているんです、保険に。これはきょうでもまた使おうと思えば合法的に使えるのです。これだけまじめな先生方が、臨床の先生方が国民のために悪い材料を使わないでくれ、国会で私が追及するものですから、臨床の先生は今はとんと使わなくなってきた。

 この間、私はこのようなことを発言するのは非常に不本意であるけれども、はっきりしておきたい。私の部屋にある方がお見えになった。もうからないから歯科材料は使わないというのを大臣の部下の方が言ったのですよ。私は烈火のごとく怒りました。何を言うか。もうからないから製造をやめたのではない。悪い材料をつくらせないのが厚生省じゃないか。保険からも外しなさい。業務局の承認を取り消しなさい。

 きょうは十年間の思いを込めて大臣に言っておきますけれども、これほどまじめな臨床の先生が使わない材料を、どうして国民の口の中に入札るのですか。発がん性の危険があるとまじめな先生方が指摘して、削除してほしい、大学でも使っていない、製造もやめた、こんな悪い材料を承認したことはむしろ私は恥ずかしいと思うのです。これについて、きちんとした結論を大臣に私はお願いしたい。大臣ならば、こういう悪い材料はやめるべきだ、製造していない材料は保険から取り外すべきだ。国民に安全な材料を提供してほしいというのがまじめな先生方の期待なんです。それにこたえるのが大臣であると信じて、大臣の御決意を伺いたい。

○丹羽国務大臣

 長年にわたってこの問題について大変問題提起をなさっていらっしゃいます先生のお話をお聞きいたしておりまして、私もちょっと不勉強でまことに恐縮でございますけれども、一般論として申し上げさせていただきますならば、新たな歯科材料の保険導入に当たりましては、当然のことながら、専門家の御意見も伺いまして、その有効性、普及性などを総合的に勘案した上で、中央社会保険医療審議会の方の御議論を踏まえて判断をしているところでございます。当然のことながら、国民保険体制のもとで広く国民に良質な医療を提供していくためには、有効な新素材開発、医療技術の観点という点からも、先生が再三御指摘いただいておりますような安全性、有効性が認められた歯科材料については、保険制度上これを使用できる道を広く開くということでございます。

 ニッケルクロム合金の問題でございますけれども、耐食性の低いものについては安全性に問題があるという御指摘も十分承っておるわけでございます。いろいろな問題がございますけれども、ニッケルクロム合金を装着された患者の口腔内で溶けて出るニッケルの量は、一方で細胞毒性を示すニッケル量よりも最も量が少ないという報告も出されておる、このように聞いておるわけでございますが、先生からの御指摘を踏まえまして、厚生省といたしましては、歯科材料の安全性、評価方法などにつきまして新たに研究班を設置いたしまして、検討を今続けているところでございます。これらの研究結果をもとにいたしまして、試験方法のあり方であるとか、評価方法のあり方だとか、歯科材料の安全性、こういうものに努めていきたい、このように考えているような次第でございます。

○薮仲委員

 今大臣が中央薬事審議会とおっしゃいましたけれども、歯科材料で中央薬事審議会の正式の議を経た材料はございますか。歯科用調査会の云々というのはだめですよ、私は関根先生に会ってきちんと聞いておるのですから。中央薬事審議会という言葉が今出ましたけれども、歯科材料で中央薬事審議会に正式にかけた材料があったら言ってください。

○市川(和)政府委員

 歯科材料につきましては中央薬事審議会の歯科用調査会というところでお諮りしておりまして、中央薬事審議会の常任部会等にお諮りしたものはございません。

○薮仲委員

 大臣、念のために御記憶いただきたいのですけれども、歯科材料で中央薬事審議会に正式にかけた材料はないのです。今歯科用調査会というのがありましたけれども、歯科用調査会にかけた数、ちょっと言ってください、そのほかにかけないで承認した数と。わかるでしょう。

○市川(和)政府委員

 昭和五十五年以降の分でございますけれども、歯科材料に係る承認品目数は三千九百二十品目ございまして、調査会にお諮りした上で承認いたしました品目数が七十四品目でございます。

○薮仲委員

 大臣、これも大事なことです。七十四品目というのは関根教授が会長の歯科用調査会なんです。ここでは基準も何もなくて非常に困っていらっしゃる段階なんです。私は関根先生にもお話を伺っておるのです。今言ったように三千数百、これは薬事法が改正されて初めて記録したのです。これは何かというと、事務方さんが承認しているのです。基準も何にもないのですよ。きょうはもう時間がありませんからやりませんけれども、私はもっとやりたいんだ。

 事ほどさように、大臣がペーパーをお読みになったけれども、中央薬事審議会の議を経た材料が一つもない。歯科用調査会でやったのが今言ったように七十四品目だけ、あとは事務方さんがオーケーと言ってぱあっと承認されるのです。これが歯科材料の基準でございますから、私が申し上げるのは、日本歯科医師会の中でも、今では会長もかわりまして非常にまじめな体制になってきていますから、材料の検討委員会もつくっていらっしゃいます。平沼先生も副委員長です。でも、平沼先生が言いました、これはあくまでも我々歯科医師会の調査結果で検討結果です。しかし、このような歯科材料とか医薬品、医療用具というのは国がきちんと判断すべきだ。国が責任をもって基準を決めて判断していただきたい。そのときに、先ほど大臣がおっしゃったことは全く正しいと思うのですが、専門家、専門学会の意見を聞いて、それをもとにしてきちんとした導入の基準を国がお決めいただきたい、こう思いますが、いかがでございますか。

○丹羽国務大臣

 先ほども申し上げましたけれども、これは歯科材料を含む医療用具の承認でございますけれども、当然のことながら、先生に再三御指摘いただいております安全性、さらに品質、有効性、こういうものをきちんと確保しなければならない。そのために、必要な資料というものをそろえまして、個別品目ごとに厳正な審査をこれまでも行ってきておりますけれども、さらに一層徹底していきたい。そして、いずれにいたしましても、必要な基準を策定しながら、国民の医療のためにも安全性の一層の確保を図っていく決意でございます。

○薮仲委員

 ここはちょっと事務的になりますから事務的な御答弁で結構ですが、厚生省が歯科材料を導入するときに絶えず類似という言葉を使うのです。ニッケルクロムのときも、サンコリウム軟質と一番最初に承認したのが板と線ですが、これに類似ということで鋳造用の歯科材料を入れてきたのです。あるいはポリザルボン、ポリカーボネート、こういう材料を入れるときも類似という言葉を使ったのです。きょうはそこまでできなくて残念ですけれども、ポリザルボンもポリカーボネートも、臨床試験なしで入っているのです。そうでしょう。

 しかも、類似という言葉を使うとどういうことになるか。大臣も御理解いただきたいのでございますけれども、薬事法上添付すべき資料並びに検査結果というのがあるわけです。ところが、類似という言葉を使いますと、物理的な性質、物性だけで、あとの安全性、全身毒性、先ほども申し上げた催奇性、発がん姓とか、そういう検査は一切要らないのです。それで全部通すのです。鋳造用ニッケルクロム合金も類似という言葉で通したのです。今後類似という言葉でごまかさないで、類似という言葉で通すことは一切やめていただきたい。そうではなくて、類似という表現があってもきちんと必要な審査基準をつくって、必要な検査をした上で入れていただきたい。

 それから、JISということであっては、先ほども申し上げましたけれども、JISもこれは安全ではない。JISの承認材料だからということでお入れにならないで、今も大臣がおっしゃったように、別にきちんとした安全基準をつくってお入れになっていただきたい。

 いかがですか、専門的に答えてください。

○市川(和)政府委員

 以前から類似品についてということでの取り扱いが一つあるわけでございますけれども、類似という場合には、従前はどちらかといいますと先生御指摘のとおり、物性面に重点を置いて判断をしてまいりました。しかしながら現在では、類似という場合には、やはりその化学組成と申しますか、そういった点も含めて判断をいたすことにいたしておりまして、新たな歯科材料が出てまいりました場合には、そういう意味で類似の既存品がある場合におきましても、現在では各種の毒性あるいは口腔粘膜に対します刺激性等に関するデータをまとめまして、個別品目ごとに審査を行っております。

○薮仲委員

 時間が参りましたので、最後に大臣にお願いをしつつ、総まとめします。もうお願いしたいことは数多くあるのですが、ほんの一部分で終わることが残念ですけれども。

 まず大臣、これは日本補綴学会の次の会長の田端会長が、平成二年四月十七日に、当時の津島厚生大臣に「口腔内に用いる歯科材料の許認可ならびに保険制度への導入に対する意見書」、これは安全性の方はたびたび申し上げましたけれども、保険導入に関しては今非常に問題があるのです。

 ニッケルクロムももちろん大学では使ってませんけれども、ポリザルボン、ポリカーボネート、いわゆる保険の表の方にはスルホン樹脂と入っているのですが、ピンク色のレジン、アクリリックレジンですけれども、あれと似たような合成樹脂の材料も保険に入っているのです。しかし、ポリサルホンあるいはポリカーボネート、これは二十九の大学の歯学部で臨床医学として講義をしていない。その材料について教えていないのです。ですから、大学で教えていないような材料を使うということ――先日も私、歯科の先生の会合に行って話をしたのです。この中で、ポリカーボネート、ポリザルボン樹脂を大学で教授に教えてもらった方、講座で聞いた先生は。そこに百人近い先生がいましたけれども、だれも手を挙げませんでした。今の臨床医が知らないのです。それが保険の中に入ってくる。入ってくると、倍の点数で入ってきますから、それを使えば総義歯の不採算という問題が解決する。こういうやり方は私は適切ではないと思うのです。

 きょうはこの辺でやめておきますけれども、やはり大学の講座でも教える、臨床の先生も、どこの歯科医院へ行っても同じ治療を受けられる、これは通法といいますけれども、そういう図式が確立しないような状態で保険にお入れになることはやめていただきたいと思うのです。

 特に歯科の問題については、総義歯の不採算あるいは――大臣、これは非常に大事なんですけれども、今卒業実技がないのです。だから大学の歯学部でも人工歯を並べるという卒業実技試験をやらない大学が多くあり、臨床実技は見学だけが多い現状なのです。これは本当はきょう指摘したかったのですけれども、見学だけでは本当のいい医者が育たないのです。ですから、大学においては、これは文部省のことでございますけれども、やはり立派な歯科医師を出すために臨床実技それから卒業実技ということが大学に要求されているのです。  それから、現在国家試験には実技試験がないのです。ですから、全く実技なしでぺーパーテストだけで合格なさるのです。しかも、医師法は、大学で国家試験に合格してから二年間は研修医制度があるのです。ところが歯科医師は、研修医制度に法の定めがないのです。ですから、国家試験に受かればそのまま開業できるのです。最近は約八万人の歯科の先生がいるのですが、そのうちの三万人の先生は実技試験がなくなってから歯科医師として免許を持っている先生方です。臨床の先生や大学の先生が、今後入れ歯をつくれない医者が出てくるのではないか。

 国民医療のために、これは文部省の調査で大臣には直接云々できませんが、歯科大学の学長さんの、将来の歯科のことを考えて、今言った実技のことも非常に懸念して、もっともっと歯科医療の充実を図っていかないと大変なことになるという指摘があります。どうか大臣、歯科診療について一段と心をとどめていただきたいと思いますが、大臣の決意を聞いて、終わります。

○丹羽国務大臣

 薮仲先生から多方面にわたっての歯科医療のあり方について御指摘を賜ったわけでございます。いずれも大変大きな問題であり、真摯に受けとめまして、いずれにいたしましても、国民にとって安全で安心できるような歯科医療の充実のためにさらに頑張っていく決意でございます。

○薮仲委員

 よろしくお願いします。終わります。


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Last-modified: 2008-12-20 (土) 08:06:06 (3078d)