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医療や歯科医療にもっとお金をかけて日本経済を立ち直らせよう !

日本歯科医師会雑誌 Vol.53 No.3 2004-6より
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諏訪中央病院管理者
鎌田實

かまたみのる
● 諏訪中央病院管理者,チェルノブイリ連帯基金理事長,東京 医科歯科大学臨床教授
●1974年東京医科歯科大学医学部卒 業,88年諏訪中央病院の院長に就任
● 一貫して「住民ととも につくる医療」を提案,実践してきた。現在,諏訪中央病院は 地域医療のモデル病院の一つとされ,利用者,視察者が絶えな い。また,14年間,チェルノブイリの救護活動に参加
● 主な 著書に『がんばらない』『あきらめない』『病院なんか嫌い だ』など多数。テレビ出演も多数
●1948年生まれ,東京都出身


◎皆保険制度のすばらしさ

期待していた、社会全般の構造改革は、ちっとも進 まないのに、医療や歯科医療に関しては着々と おかしな方向に進みだしています。 国民皆保険制度の崩壊につながりかねない市場原理 を医療に取り入れることには疑問を持っていま す。
 日本の皆保険制度について世界保健機構 (WHO)は,世界で最もすばらしい医療シス テムであると高く評価しています。お金のある なしにかかわらず,高い水準の医療が受けられ る,世界的にもユニークなこの医療制度は絶対 に維持しなければならないと痛感しています。
自分の話で恐縮ですが、私の家は大変貧しく、 母が病弱で、国民皆保険になる前に心臓弁膜症で 長い入院生活を余儀なくされました。そのとき 父は、母の心臓手術のために、朝早くから深夜まで タクシーの運転手をしてお金を稼ぎ、やっと念願か なって母は手術を受けることが出来ました。貧乏な ために十分な医療が受けられないような社会に もどしたくありません。

◎ HMO とアメリカ

 アメリカでは1980年代に,医療費の抑制のた めに国民皆保険制度を廃止し,健康維持組織の HMO という一種の民間医療保険制度に切り替 えました。これによってある程度医療費の伸び を押さえることはできましたが,その後医療の 中身は保険会社が決めるようになってしまいま した。患者が契約した医療保険の範囲のなか で,施せる手術が制限され,薬や検査の内容ま で指定されるようになってしまいました。患者 の命を助けるためにどこまで治療できるのか, 医師は保険会社と交渉しなければ医療は行え ず,医師の裁量権はほとんど失われてしまいま した。
 映画にもなったパッチ・アダムスという医師は 著書のなかで、「今やアメリカの医師たちは、 医療をしていることに喜びを見出せなくなってし まった。医療保険会社の操り人形になり、人の命を 支え、助ける喜びを失いだしている」といった 意味のことを書いています。HMOが導入されて アメリカの国民が幸せになったかといえば、一部の 金持ちたちは日本の何倍もいい医療を受けられるが、 まともな医療を受けられない人も4,000万人もいる のが実情です。
 確かに、日本の国民は医療に対して不安や不満、不信感 を持っています。その大きな原因の一つは、患者を 見放す医療にあります。今の健康保険の診療報酬では、 急性期を過ぎた入院には加算がなくなるため、患者の入院 日数を17日以下にしなければ、病院の経営が成り立たない。 そこで多くの病院は経済効率を上げるために平均在院日数の 抑制を最大の目標にし、17日以上の入院患者は早く退院させて 放り出そうとします。

◎ 「冷たい医療」にならないために
ぼくらの地域では「冷たい医療」にならない ために,病院の周りに老人保健施設や特別老人 ホームやホスピスをつくり,24時間体制で医師 が在宅へ駆けつけられるようにしました。さらに 、病診連携を密にしました。平均在院日数に加算 されない回復期リハビリ病棟を併設し、患者を 放り出さないですむ環境を整えています。在院日数 を下げても退院した患者が安心でき、地域の医療費を 上がらないよう努めています。
 さらに健康づくり運動など予防に取り組み、地域の 医療費を上げないようにしています。かかりつけ医や かかりつけ歯科医を推進するための各診療所を市民に 認知させるための小冊子をつくり、市民教育の場に 医師会、歯科医師会、病院の医師などがペアを組んで 出て、市民の意識改革を始めました。予防は健康保険の対象外 でお金にならないが,医療の大きな目的の一つ です。ところが市場原理が導入されれば,経営 に結びつかないために切り捨てられ,これまで 築いてきた地道な努力が崩壊する恐れがありま す。

◎ 大胆な医療構造改革も必要

HMO の導入によって民間保険化されたアメ リカの医療費はどうなったかと言えば,国民総 生産(GNP)の12.9%(1998年)を占め,日 本の場合は7.1%(同)です。この悪条件のま ま,市場原理を導入すると,現場がゆとりをな くし医療が劣悪化する心配があります。アメリ カの制度を真似しなくても,せめて先進国の平 均くらいの医療費を使いながら大胆な医療構造 改革をする必要があります。
その結果、国民が医療に全幅の信頼をおくようになれば、 世界で一番貯めている預金を安心して消費に廻し、 日本経済も元気になるはずです。
 総国民医療費はGNP比7.1%から10%位に増額する べきだと思っています。今のように、日本経済が 安定しないときは、国民負担を増加させることは できません。税金の使用方法をシフトすべきだと 思っています。ダムなのか命なのかとか、道路 なのか健康なのかという問いを国民に呼びかけて いかなければいけないとおもいます。
 昨年行われた財務省のインターネットを使用した 国民の意識調査でも、自分たちの税金を「道路」 「開発援助」「防衛」を減らして、「年金」や 「医療」に使って欲しいと望んでいます。日本経済の ためにも、医療にお金をつかって、質の高い、 安心できる医療や歯科医療を国民に提供すべきだと 思っています。
 老後が心配、大病したときが心配という国民の 不安をとってあげれば、持っているお金を使って 自分の人生を豊かにしようとします。その結果、国民も 元気になり、国も経済界が動き出して元気になる のではないでしょうか?

出典 日本歯科医師会雑誌 Vol.53 No.3 2004-6より


アメリカでは虫歯を放置した結果少年が亡くなる不幸な事例がありました。現在の日本ではありえないことです。しかしアメリカ型の医療制度を模倣すれば、経済的な理由により受診を控えることもありえることです。しかも結果は自己責任です。ヒラリー・クリントン氏も日本の保険制度を研究したといわれています。制度以上に医療従事者の献身的な姿勢によるところが大きいとの結論だったようです。
市場原理にまかせる、規制緩和と聞くと薔薇色の結果が待っているように誤解しがちですが、医療の分野においては本当にそうでしょうか?利益に結びつかないことは切り捨てる事もまた市場原理です。より多くの契約者を獲得するための宣伝費用も掛け金から事務費として捻出されます。企業である限り利益を上げることが優先課題なのです。
医療制度は安心して暮らせるための安全弁の一つです。医療従事者の献身だけでは破綻してしまいますし、受診する側にも相応のモラルを求めなければ制度の維持は難しいでしょう。しかし、経済的な抑制の側面からのみ改革を推し進めれば、利益にならない事は切り捨てる、もしくは相応の負担が求められることになります。
つまりは、アメリカ型医療制度に移行した場合医療費は必ずしも圧縮されず、増加分は個人の負担になります。現状でもけっしてゆとりがあるわけではありませんが、更なる切りつめは医療の悪化を招く結果となり、現状より悪い医療しか受けられなくなる未来もあると思わねばならないという事です。 マイケル・ムーア監督の最新作「Sicko」は、アメリカの医療問題について描かれた物だそうです。
最後に、今回この記事を掲載するに当たって、快く許可をしてくださいました日本歯科医師会、鎌田實先生にはこの場を借りて深く感謝したいとおもいます。
(by azumi)








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Last-modified: 2007-06-18 (月) 22:37:59 (3566d)