Top / 技工物の7:3問題

技工料金の現実 !

技工料金について話をしよう。タブーなのかなとも受け取ってきたが、色々なHPで も公開されて来ているのでここでもオープンにしていきたい。個々の技工料金と共に 歯科技工士の収入がどのくらいなのか、歯科医師の収入はどうかといったことにも言 及したいと思う。

ラボの収入は全て歯科医師、歯科医院からの技工料金である。それ以外に金属の売り 上げもあるが、これについては現物を渡されていたり、ほぼ時価と言うこともあって 正直右から左へいくだけで利益とは結びつかない。ほかにも直接収入があったとして もそれは技工とは関係の無い収入であろうと思う。単純に言えば、歯科医院の経費の うち技工料金として支出された金額がイコールラボの売り上げとなる。個々のラボに よってどの歯科医院からどれだけ外注を受けているかは一様ではないので、そこも一 対一と言うことで単純化して説明したい。

今までインレーが幾らクラウンが幾らと考えてきたが、視点を変えて歯科医院の収支 のなかで、技工代金がどのくらいあるのかが大事だと思うようになってきた。知り合 いの歯科医師の先生方の話では総支出に此める技工代金の割合は安い所で15%、高 くて25%位、平均すれば20%程度だと言う。一方、技工物の補綴点数、収入の総 売り上げに対する対する割合は50%位あるそうである。

一歯科医院の平均売り上げが345万だとか。15%で51.65万、20%で69 万、25%で86.25万となる。この支出を高いと見るか安いと見るか如何だろう か。 補綴に50%ととして172.5万の収入があった上でである。これはちょっ と極端な例かもしれないが保険だけだとこのくらいであろう。実を言うとG3のラボ の売り上げがこのケースと合致する。25%のケースと言いたいが、現実には金属代 込みで20%と同じくらい、金属代を差し引けばまさに15%のケースである。実感 としてはもっと低く感じるし、その金額の中からラボはあらゆる経費を支払わねばな らない。可処分所得と言えるものなどほとんど残らないのである。ほとんどのラボは 一件の歯科医院とだけではやっていけないから何件もの歯科医院を駆けずり回り、数 をこなして30万40万の手取りを確保しようとするわけである。

歯科医院にとっては、その補綴における差額が生命線であるらしい。その一方、歯科 医師の平均月収は130万ほどあり、技工士はよくて30万40万。保険点数で技工 士がタッチする点数は決して低くはないのであるが、立場の違いがこのような大きな 差になって現れてくるのである。7:3と言うのはここで言う補綴点数を製作点数と 管理点数に分けるわりあいである。仮にこの172.5万の7割としよう。120. 75万である。このくらいの売り上げがあって始めて生活が出来ることになると思 う。歯科医師はどうだろう。手取りが50万目減りする。それでもまだ80万であ る。ワンマンラボでも経費は半分を超えるだろうから、手取りが55万から60万に なれば御の字だろう。

実を言うとここでの数字はある歯科医師のHPから借用させていただいた。(オー ケーの返事はまだもらっていません、すいません)G3は先にも書いたように個々の 単価に気を取られすぎていたきらいがある。全体の中で技工士の仕事の占める割合、 価値をもっと知ってもらわなければ、いくらいい仕事をしたとしても手元には何も残 らないのである。現実にある歯科医師の実際の技工代金は18%くらいであると言 う。このような数値は理解していても歯科技工士の本音と窮状までは分かっていただ けていないのだろうかと思う。

多少長くなるがQDTの1997.11月号から引用させていただく。

「4万8000人の技工士が2.400億円のパイの仕事をしているわけです。そう すると単純計算で1人500万です。この500万というのは技工料の総額で、材料 費は含まないものですね。この売り上げの場合所得はいくらになるか。この数字は7 :3の場合です。地域によっては7:3は維持できていないわけですから(維持でき ている地域があるとは思えない、個人で存在するかどうかだと思う<筆者注)、非常 に苦しい状況ですね。」

「7:3で単純計算した場合、1人500万ぐらいになるというお話ですね。ここか ら3割くらい値引きしますと350万の年間売り上げと言うことですね。」

「技工料の総額がです。所得ではありません。」

「ということは、これは食える状況ではないですね。」

まじめによい仕事をしている技工士と言えども、このような状況で仕事をこなしてい るのだ。その上値引きは3割どころか5割位いっているんだから何をかいわんやであ る。。自費専門か自費の割合が大半でなければ所得と呼べるような収入は確保できな い。そうでなければただ数をこなすしかない。不正請求などどう逆立ちしたって出来 ないのである。

いよいよ始まった技工士減少時代 !

技工料金の現実をHPで公開したのは1999年頃だったと思う。 そのころから保健医療での歯科技工士の現状や労働環境、就労環境などがネットなどを媒介に少なくともネットにアクセスできる技工士の中では話題になっていたと言える。  また、時を同じくして専門誌などでの症例発表はインプラントやオールセラミックス、金属床などの審美とより高度なフィソロフィーを持つ症例にシフトしていったように感じている。 向上心のある歯科技工士と日々の保険症例をこなすのに精一杯の技工士との分化がはっきりとしだした時期だったとも思える。 そのような時代に、すでに歯科医療保険での歯科技工業界の崩壊を予見していた人たちは少数ながら存在した。 そして2006年も半場を迎え、公式とも言える立場から歯科技工士の減少がアナウンスされたようだ。

私の世代でも串の歯が抜けたように辞めて行く転職してゆく話を聞いていたが、それ以上に過去5年ほど専門学校の募集定員割れと新卒者の離職率の高さを、様々なソースから聞いてきた。 このままでは、歯科需要に応じきれるだけの技工士が存在しなくなると危惧していたわけですが、一般歯科医師側には幾らでも安く応じる技工側に、そのような問題が内在していようとは想像も出来ない事だったと思う。 平成に入ってから開業歯科医院数は右肩上がりであり、歯科技工士も増加しているからこその、ダンピング競争だろうと感じてしまっても仕方がない部分もあったかと思える。

しかし、ダンピング競争を巧妙に仕掛け、保険技工をかき集めていたのは地域に根差した零細ラボではなく、営業社員を多数抱えて一人の営業社員が顧客300軒を超えるような、中堅以上の大型ラボであったと思う。 結果、営業力に劣る零細ラボの売上は25万平均などと言うデータも出ていると聞く。

私の想像以上に大型ラボによる保険技工の寡占は拡大しているようで、保険技工の9割が大手ラボにて作製され、ワンマンを含む零細ラボでの作製は1割程度であろうと推測される。 現在の所一般開業歯科医院の殆どが、歯科医師1名衛生士1名助手1名といった言ってみれば零細ラボと変わらない規模の経営規模であることを考えれば、保健医療の生命線は大型ラボに握られていると言っても過言ではないと思う。

基本的に保険歯科診療は地域密着型だと言える。 歯科医師の中には地域の学校医を務めたり、自治会役員などもこなしながら住民の健康維持に強く関わってきた。 地域密着型の中小ラボもこのような歯科医院をサポートする形で、営業行為よりも歯科医院を支え患者さんを支えるという事を第一に続けてきたのだと考えている。

しかし、二極化の進展は、ネガティブな面も多くある。 歯科医院においても医療の質を維持できなくなってしまうと言う事である。 本質的に医療としての基本的な部分には自費であろうと保険診療であろうと差異は無いはずであるが、それぞれの価格ベースに10倍もの乖離が合っては、差異を埋める事は難しい状況に置かれている。 そしてその差異は、技工も現れてくる。 技工士の収入に差異を無くそうとすれば単純に言って10倍の仕事をこなさねばならない事になる。

大型ラボが営業力を強化して、零細ラボの10倍以上の技工物をかき集めるのも、そこに理由があると言える。 それはまた一人当たりの技工は10倍こなさねば生活できる収入にならないと言うわけでもあるが。

大型ラボの求人は今も旺盛であると聞く。 しかしその内情は成長産業だからであるとは思えない。 2年後や3年後の定着率の悪さを勘案すれば、技術者を大事に育てて成長と共に企業規模を大きくして行くということではなく、新卒歯科技工士を単なる使い捨ての低賃金労働者としか捉えていないからではないだろうか。

また一方では、社会保障費の減額や国家財政の赤字もあり、年々減ってゆく医療費が歯科保険点数を直撃し、且つ又、開業歯科医院の増加や患者さんの受診抑制も在って、歯科医院の収入は減るばかりであり、それが診療の品質をとりわけ歯科技工の品質に直結する、形成や印象作業、石膏模型などの品質を低下させ、それがそのまま歯科技工士の作製意欲をも削ぐ形になっているのである。

上記したような理由から、現状のままに保険医療制度における底上げが行われない場合は、今後も急激な歯科技工士の減少が続くと思われる。

これからが働き盛りといえる30代後半から50代にかけての歯科技工士は勤務歯科技工士の場合、大型ラボ勤務の場合であっても収入の増加は期待できず、独立開業も経済状況や設備構造基準などのハードルも在って難しい状況にある。 すでに開業している、中高年歯科技工士においては、保険専業では最低限の収入の確保も厳しい場面に直面している。

業界の人口分布はピラミッド型から、やせ細った頭でっかちのものになってしまった。 社会保障が国民生活のセーフティネットであると言う、基本を忘れた政府や官庁の無責任だけがこのような状況を招いたのかは定かではない。 今まだ熟練技工士が残っている状況で、明確な対策に国を挙げて取り組まない限り、日本の誇る国民皆保険医療制度下での歯科保険診療は瓦解するだろう。




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Last-modified: 2008-03-16 (日) 16:40:09 (3446d)