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国民の皆様へ   混合診療について考えてください !

日本歯科技工士会HPより引用




平成17年1月20日

日本歯科技工士会  

    会長 中西 茂昭

歯科医療は、「健康寿命」の維持と増進に役立っています。ところが、現在の歯科医療は個別の繊細な小外科治療の連続でありながら、保険診療での評価は驚くほど低いのです。この状況で歯科医療機関が、「入れ歯差益」等を受領せず、まじめに保険医療に取り組むと、その経営に過去の潤沢イメージはありません。
欧米諸国で病後の患者さんが人工栄養でいる期間は、日本ほど長くはありません。人工栄養でいるということはどういうことでしょうか。それを短くすれば、医療の効率性つまり総医療費削減に繋がることは当然ですが、この問題は「ヒトが生きる喜び」の問題としてもっと注目されて良いはずです。終末期医療の質の向上や期間短縮に寄せる国民の皆様の願いは、厚生行政に反映されるべきです。歯科医療は、こうした方面でももっと役に立てるのです。
混合診療」とは、皆様が受ける医療に保険範囲に含まれている部分と保険範囲に含まれていない部分とがあっても、「保険に含まれている部分については保険を支給しましょう」という制度のことです。
「おやっ」とお思いですか。「今は違うのか?」 そうです、今は違うのです。現在は原則として、皆様が個別に受ける医療に保険範囲に含まれている部分と保険範囲に含まれていない部分とがある場合には、「保険に含まれている部分についても保険は支給しません」=「全額を自費で」という制度です。
そこでこれに対しては、「著しく高額な医療となってしまう」「全か無かの択一を迫り過ぎ」などの主張が示されました。たとえば手術をして、その一部の術式に保険が認められていない場合、手術全部が自費になる、「これはどこかおかしい」という主張です。
他方、混合診療の推進主張に対しては、「弱者切り捨て」「皆保険制度の崩壊」との主張が展開されました。確かに、現在の保険範囲がどんどん縮小されて行くのは問題です。もし、骨折して病院に行ったら「レントゲンは自費ですが撮りますか?」と問われ、その費用もその場の“言い値”であったらどうでしょう。皆保険の原理は維持し、安心して医療を受けることができて、真の弱者が救済される制度は守られるべきです。
こうした議論を経て、平成16年末に政治的方向性がまとまりました。平成18年の医療保険制度の抜本改正法案のなかで、(欷嬰用のための評価を行う「保険導入検討医療(仮称)」と、∧欷嬰用を前提としない「患者選択同意医療(仮称)」とに安全性や濫用を防止しながら分けていって、保険と保険外との併用を一定要件の下で認める方向となったのです。
歴史を振り返ります。
歯科分野では、昭和後期に「差額徴収」との名で保険範囲内と保険範囲外との併用に関して社会問題がありました。マスコミ各社や消費者団体などに取り上げられた各種事例には、到底許されない不当なものがあり、事実、悪徳としか言えない歯科医療機関もあったのです。同時に、正当が誤解されたものもあったでしょうし、忙しさに任せ説明不足の歯科医療機関もあったことでしょう。つまり、制度を悪用した者も居たし、制度の不備やインフォームドコンセントが困難な状況もまたあったのです。
現在の歯科界は、当時と比較し、需給バランスを中心とする基礎的諸条件が大きく変わりました。歯科医学教育も更新しています。だから、今後検討されるという歯科分野の混合診療については、国民の皆様に次の論点に興味をもっていただいて、歯科医療を役立ち信頼されるものとしていただきたいのです。
1 安全に関わらない保険範囲の問題
「保険で認められていない」というと、新しい技術や薬に対して「まだ安全の確認が出来ていないから」とイメージされるでしょうか。勿論、その理由で認められていないものもあります。しかしそうではなく、その行為自体にはすでに安全を認めて保険を適用したうえで、「保険で請求できる回数や場所を制限している」という、そんな「保険を認めない」もあるのです。
こうした、平均的な必要度や財政的理由を主とする保険外については、その部分についてだけを自費で追加する選択ができても良いはずです。歯科分野にも、こうした保険外はいくつもあります。
2 安全性に関わる医療提供と情報の問題
患者さんにとって「選択肢が増える」ということは基本的に望ましいことでしょう。ただし、期待する結果との比較衡量の下での安全確保が前提でなければなりません。保険外診療を保険診療と併用する方式を認めれば、保険外診療は今までよりも国民の皆様に身近なものとなるでしょう。ならば、その外形をつくる際には、臨床に供される医療行為や薬材が野放しであってはならないはずです。厚生労働省は、この点でもっと働き、一定のルール作りや情報開示を図るべきです。
歯科分野にもこうした問題はあります。国民の皆様が選択するには、考えるための公正な情報がまず必要です。このためには、セカンドオピニオンの普及や第三者相談窓口の開設など、患者側と医療側との二者関係にとどまらないもうひとつの存在が大きな役割を果たすでしょう。
3 皆保険部分の維持
この国の医療の皆保険制度は、世界に誇るべきものです。もし病院の玄関で、「あなたの健康保険では、この病院にはかかれません」と断られたらどうでしょう。「そんなことあるの?」世界にはあるのです。こうした保険種別によるアクセス制限は問題です。
「医療行為や薬代の単価」のことも、あらためて考えるべきです。この国の医療皆保険制度では、医療提供者側が勝手に「今日は患者が少ないから、午後からは“単価”を少し上げよう」なんてできません。そんな心配をすることなく受診できる体制は、病苦にある者にとっては安心です。国民皆保険体制とフリーアクセスは大枠で守られなければなりません。
「保険対象になっていない診療」が主で、「保険診療」が従になってしまえば、患者の経済力によって受ける医療の質に劇的な差が生じます。財政ベースで単純に保険範囲を縮小しないことだけは、明確に意思表示しましょう。歯科分野では「どういう疾患と治療を保険でみるのか」について、この主従で考えましょう。
4 被保険者としての権利
医療には、事実として、保険部分と保険外部分とがあります。
国民(被保険者)が保険外部分をプラス項目としてひとつ選択したとたん、保険部分の“使用権”が消えることはあってはならないはずです。混合診療反対を主張する側が「混合診療の導入は金持ち優遇」と述べた際に、小泉首相が「全額自費を迫る今の制度の方が金持ち優遇」との旨を反論されたのは、こういう意味でしょう。受ける医療の保険適用部分は被保険者として受益し、保険が適用されない部分は自己負担の選択を各々が判断する。こうした受益権の考え方もあるのです。
歯科分野では、たとえば「前歯は自費で、奥歯は保険で」とか「入れ歯の維持に磁石を使いたい」というような場合、現在は原則、保険で認められている治療部分へも保険金は支給されません。“繋がっている”とか“術式の一部が保険適用ではない”といったことが、本来の「被保険者の権利」とどういう関係があるのでしょうか。まっとうな議論が必要です。
5 患者側にも学習意欲が必要
保険外が臨床現場に単純に混在すると、効果や安全性が疑わしい療法が横行しかねないとの危惧があります。不心得な医師や不勉強な歯科医師などが保険外の治療を不当に勧めて、患者の負担増を招く可能性も否定できません。
国民は医療消費者ですから、医療を受けるについて、消費者として賢くなる姿勢も大切です。医療費については、単に差額ベッドの話題だけではなく、社会保障制度や医療提供体制、医学情報に関する教養を高める姿勢が重要になります。だから「知識や情報を望めば得られる」そんな政策を求めていきましょう。
歯科分野においては、ドクターフィー部分と委託費部分や提供内容について「患者として、費用の内訳や術式・成分等を知りたい」と求めることは、妥当な歯科治療を適切な費用で受けるために役立ちます。契約は、一方の側だけの責任ではありません。
6 全体への視点も もちたい
医療分野の生産性・雇用・GDPなどは、国民経済の大きな課題です。
高齢社会はもっと進みます。そのときの医療費を、現在の少ない子供たちが大人となった社会に「あなたたちの保険料や税金で全部賄ってネ」と、いつまで言えるでしょうか。一律に保険で賄うべき部分と、付加的なサービスや個人のライフスタイルによる選択などの部分とを区別する視点はもちたいものです。
「平等と公平」という言葉があります。このふたつは、意味が異なります。国民個々への単純な平等は、多くの場合に社会的な公平とは限りません。
「予防行為」は「かかってしまった病気への治療」ではないので、現在の大枠では医療保険の支給対象ではありません。でもたとえば、明らかに1億円の投資で10億円の出費が防げるのなら、まず1億円をかけるのも賢い選択でしょう。これまでの規範に囚われない、実質的な枠組み作りを始めるべきでしょう。
わが国では、すべての国民がいつでもどこでも平等に医療機関にかかることができ、医療技術の進歩を享受できるという仕組みを構築してきました。その結果、世界最高水準の平均寿命や高い保健医療水準を実現しました。その成果を、適切な改革を為すことで守っていくべきです。
歯科分野においては、なによりも、歯科機能の維持が「全身健康の維持・増進に役立つ」ことに着目してください。食べ笑い話すという国民の「健康寿命」を身体と心の双方から延ばすために、歯科保健と歯科施策にもっと関心を寄せてください。
平成18年までに「混合診療」の本格的議論が進みます。この議論は、こと「保険と自費との併用ルール」を決めることにとどまりません。将来のこの国の社会保障と経済全体に影響を与えるものとなるでしょう。
そうであるならば、この検討に対しては、国民の皆様の高い関心が寄せられるべきです。論点としては、仝開の場での政策検討 医療費の内訳の明確化 0緡鼎悗諒4磴粒領 などに注目してください。
私たち歯科技工士は、医療専門職のひとりとして、そして一市民として、あらたな保健施策の構築のために努めてまいります。国民の皆様、混合診療について考えてください。  

                  以上









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Last-modified: 2007-06-17 (日) 17:45:06 (3959d)