Top / 混合診療 / Cross the Rubicon (混合診療と民間医療保険)

増大する医療費を抑制する目的で、近い将来に国民医療費と医療給付費の乖離分10兆円を民間の生命保険会社に担わせようとする考えが有ると仄聞する。また最近では、その根拠を兎も角として10兆という数字が一人歩きし始めているようにも思える。

そして以前から低医療費政策に依って自由診療に頼らざるをえなかった歯科では(積極的に保険の拡充をする努力を怠って来たことも大きいが)、混合診療の導入に積極的な意見が数多く聞かれる。
また最近では医科の一部にも混合診療を歓迎する声が有る。公的負担も抑制出来るし、医療機関の新たなる所得源にもなる、そして何より患者の選択肢が増えると。

そこで混合診療の導入−民間生保の参入」に就いて、ひとりの開業歯科医として述べてみたいと思う。
この最大の問題点は、所得や健康上の理由から誰でもが民間の医療保険に加入することが出来るわけではなく、また保険外医療を受けられるか否かに就いても同様であるという事だが、ここでは敢えて民間保険に加入するものとして述べていく。
又ここで私が言うところの民間保険は、混合診療本格導入後のものであると解釈して頂きたい。

混合診療が本格的に導入されると、そこへ民間生保が挙って参入する。国民は、どの会社のどの保険が良いか、「賢い消費者」としてその選択を始める。各保険会社は、ひとりでも多くの消費者に選んでもらう為、そのニーズは勿論のこと、わがままをも酌んで、より良き商品、よりお得な商品を開発する。---------それなら結構なことではないのか?
然し、ここで忘れてはならないのが「企業の執念」である。
彼らの最終目的は「利益・利潤」なのである。「ひとつの商品」を売る側は、それだけで自分達の生活がかかっているが、「ひとつの商品」を買う側は、何も自らの生活をかけてまでそれを選んでいる訳ではない。依って結果は明らかである。
「賢い消費者」を自認してみても、本来のコストに保険会社の経費や利益が上乗せされるに過ぎない。また企業の手法で消費者(保険契約者)の為に医療費を削減出来るというのも全くの詭弁で、それは必要な医療が受けられなくなる事を意味しかねない。
医療や介護といった自由競争に適わない分野まで市場化してしまうことが何をもたらすか。
次に我々歯科医療提供者の側から見ると、民間保険は最初、自由診療を中心とした新規需要の開拓を期待させるものとして登場する。然しこれは単なる足掛かりであって、民間保険が普及するにつれ、本来公的保険が担うべきところのものまで侵食されてしまう。また査定支払い拒否値下げ要求も生じてくると考えるのが妥当で、即ち我々は患者の為に互いに競争するのではなく、保険会社の為に競争させられることになるかも知れないのである。
また歯科のような軽費医療にて十分に機能するのであれば、必ずそれはより重医療へと移行する。そして本来必要であったところのものまで受診抑制が生じてしまう。結局多くの国民にとって「選択的な支出」として認識される歯科は、自動車保険のファミリーバイク特約のような扱いになってしまうかも知れない。

混合診療の大幅な導入を認め、Cross the Rubicon、人柱を立ててまでルビコン川を渡ったのはいいが、対岸で待っていたのは、ダークスーツに身を包んだ保険会社の審査員だけだった、と言う話にならないように。

再度勘考の必要ありと認むるのは、私だけではなかろうと思うが。

                                   by Zep-







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Last-modified: 2007-06-17 (日) 17:51:06 (3869d)