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歯科技工における問題点と主張
みんなの歯科ネットワーク 歯科技工士部門

1. 歯科技工士の存在について

  歯科医療においては補綴物の製作は歯科技工士法に基づき国家資格を与えられた歯科技工士および歯科医師のみが行うことができると規定されております。 現在では臨床で給される歯科補綴物の製作はそのほとんどが歯科技工士によって行われています。
補綴物製作と装着は歯科治療の総仕上げ的な意味を持ち患者にとって治療に対する満足度の大きくかかわっている重要な位置を占めているといえます。
わが国においては圧倒的に多い比較的小規模な歯科技工所が、歯科医院と近い距離で綿密なコミュニケーションをとりながらきめ細かい補綴物製作を行ってきました。
近年において歯科治療内容の高度化に伴い歯科技工にも高度な技術が求められ、歯科技工士にも知識と技術の向上、また設備投資など多大な努力が求められてきました。このことは保険適用の技工物でも同様で硬質レジン前装冠などが適用にされ、良質な歯科保険医療の提供に貢献してきました。

2. 歯科技工士の労働環境

 歯科技工士の労働環境は良好なものとはいえません。特に大多数を占める保険適用補綴物の製作にあたっている歯科技工士の労働環境は苛酷を極めていると言えます。その原因としては過去20年来、上昇どころか値下がりの一途をたどっている技工料金にあります。
さらに近年の歯科保険制度の改正により歯科医院側からの更なる値下げ要求があり歯科技工士の低賃金長時間労働に拍車をかけています。
歯科技工士会の調べでは歯科技工士の平均労働時間は公務員も含め週55時間、平均年収は47歳で493万円(平成15年調査)とありますが、実際には70時間から100時間を越える事例も見られ、収入も400万円から300万円を下回る例もあります。
 これには近年ますます圧縮削減されている歯科保険点数により歯科医院の経営が圧迫され、その削減分を歯科技工料の値下げにより補填しているという現実があります。
 一方で補綴物製作において適正料金についての検証が「適正歯科技工料についての検討 平成14年11月23日 畔地史郎 衛藤勝也」など複数で行われております。それによると歯科技工業が社会的要求に答えるために健全に運営されるための製品原価は、現在一般的といわれる技工料金の3〜4倍になっています。また、昭和63年に官報に記載された厚生大臣告示、所謂7:3告示で示される技工料金の2〜3倍に当たっています。
一例を挙げると全部鋳造冠において技工士会発表の平均技工料金が2500円、実勢価格が2000円前後のところ、いずれの適正価格計算においても8000円前後となっています。
これは所謂7:3告示での価格3120円でも適正原価に遠く及ばないことを示しています。
 以上で示すように現在、保険適用補綴物の製作料が非現実的な低料金に抑えられていると言えます。そのため大量の技工物を受注しいわゆる薄利多売にならざるを得ず一人一人に完全なカスタムメイドで作られる歯科補綴物の性質上機械化も出来ず、製作に十分な時間をかける事が困難な事態になっています。この事は国民の健康保持に応え良質な補綴物の供給を困難にし、歯科技工士の健康維持、強いては生活権をも脅かす事態へと繋がっています。
 現在、歯科技工士の有資格者数は10万人余り。 そのうち実際に就業しているものは3万5千人ほどといわれています。 一方歯科医師数は8万人を超えるといわれており本来需給バランスから言えば技工料金は安定から上昇へと向かうはずですが、値下がり傾向が続く現実は、現状認識が皆無とも言いえる現行歯科保険制度に起因していると言わざるを得ません。現在の歯科保険制度はこうした歯科技工士の過重とも言える犠牲の上でかろうじて成り立っているといえます。

3. 現状と将来に対する危惧

 歯科技工に従事する者は近年急激な減少傾向にあります。この事は新卒技工士の卒後1年間で15%、7年後には75%とも言われる高い離職率と、歯科技工士養成に当たる歯科技工専門学校の廃校や定員割れという形で具体的に表れています。
一例を上げれば、広島や静岡での専門学校の廃校、都下専門学校での募集定員に対して実際の入学者数が半数以下の報告もあります。
 また就業者の年齢分布も40歳以下が非常に少なく、歯科技工業の将来についてその維持に不安の声が出ております。(全国歯科技工士教育協議会会長の末瀬一彦氏。9月1日発言)
歯科技工は専門性の高い特殊技能であってその技術は若い世代へと年々継承されつつ進歩発展してきました。その継承が途絶えてしまえばその回復には莫大な費用と時間を要することは、一般工業会での特殊技能者の減少などでも明らかなことであり、将来的には大きな国家的損失となりえます。このような危機的状況は今すぐにでも対策を講じなければならない緊急の問題であると言えます。
 また、国内技工料金の価格低下はすでに限界点を超えており更なる低価格を求めて海外に委託する動きがあります。この海外技工問題はそもそも保険外の自由診療の分野でのみその有用性が認められた事であり、本来、国内薬事法などに対応していない為に導入できない最先端技術を導入する目的で、歯科医師の自己責任において個人輸入する形で行われるようになった経緯があります。後にこれを追認する形で以下のような通達が出ました。

「平成17年9月8日付 医政歯発第0908001号 厚生労働省医政局歯科保健課長 国外で作成された補綴物等の取り扱いについて」

さらにそれに先立って保険適用補綴物の取り扱いも含めて、以下のような見解も出されている。

  厚生労働省歯科保険課:
「保険外の治療であって、歯科医が自分の責任で直接、海外に指示を出すのなら問題はない。一方、保険診療ならば、歯科技工は国内でやらなければいけない」 「歯科医から入れ歯の国内での技工指示を受けた技工士が、海外に再委託に出すのは違法となるが、歯科医の海外への注文を輸入業者が仲介するのは、そもそも歯科技工士法による規則の対象にはならない」 中日新聞(2002年5月30日付)より

 しかしながら、以上の見解を疑義解釈する形で医学的見地を軽視し経済性のみの有用性から更なる低価格を求め海外、特に中国への補綴物製作の依頼が増えつつあります。  前述のとおり国内における歯科技工物の製作は歯科技工士法第17条において国内の歯科技工士免許を有する歯科技工士もしくは歯科医師が当たらなければならないことは周知のことであります。また、使用材料等に関しても国内の薬事法等厳しい審査を受けたものを使用しなければならないと言う規制の下製作されています。 しかしながら海外技工に関してはこのどちらの条件も満たしておらず、その安全性医学的有用性など甚だしく疑問があるところです。
歯科医師の責任においてその形状等で医学的有用性はある程度判断できる部分も確かにありますが、化学的な成分などは検査のしようが無いのが現状です。
医療として国民の体内に装着される歯科技工物としては、海外補綴物は患者さんの健康に深刻な問題を引き起こす危険性があり、安全性を危惧せざるを得ない事に繋がります。  国外補綴物等の品質維持を念頭において、厚生労働省は平成17年3月に以下の医政局長通知を出している。「歯科技工所の構造設備基準及び歯科技工所における歯科補綴物等の作成等及び品質管理指針」
これにより精細な「歯科技工録」の記載を求め、主材料の品名ならびにロットもしくは製造番号の記載を義務付けるとしています。実はこのことが国内において保険補綴物製作に当たっている圧倒的な割合を占める中小の歯科技工所ならびに個人営技工士に更なる負担を強いることになっている事実があります。
なぜならば、国内であれば、認可を受けた確かな歯科医療器材が使われざるを得ず、材料等も医療用に承認されたものが当然を使用されています。万一問題がある場合にも容易に追跡調査が出来ます。一方、海外補綴物にはそういった規制が全くない場合が多く、少なくとも日本国内と同様の規制は求めようがありません。またそれにより問題が起きた場合の追跡調査は不可能といってよいといえます。
本来ならば、輸入品にこそ国内と変わらない厳しい基準を求めるべきものが、結果的には国内の保険技工物製作を支えてきた中小技工所を苦しめる結果となっています。
米国では1980年代から一般技工物が主に中国に発注され、現在ではその割合が10〜15%に及んでいます。しかし近年においてその安全性に疑問の声があり、米食品医薬局(FDA)が厳しい規制強化の要望を通達しています。わが国ではそうした規制が全くないに等しく無防備な状態にさらされているといえます。

 パラメディカルスタッフの問題では歯科に限らず医科の分野においても外国人看護師の導入などがあげられます。しかし看護師の場合国内で教育研修を行い国内の資格を取得させること義務付けた上で導入され、資格を取得できないものはヘルパーとして直接看護行為は行わない。また、資格を保有した外国人看護師も国内で医師や看護士の指導の下に業務に当たることでその安全性を担保することができるとされております。
 一方、海外技工においては国内の資格取得の義務も無いどころか、国内の歯科医師ならびに技工士の指導管理が全く出来ないところで行われています。 そもそも歯科技工士法は海外には存在しません。こうした意味では外国人看護師問題と決定的な違いがあります。
 以上のように、海外技工の問題は国内から全く離れたところで行われ、その安全性の検証が著しく困難であるといえます。強いて言えば、「歯科医療における安全保障を海外に完全に委ねてしまうということになります。
このことは国内の健全な歯科医療の維持発展にとっては大きな問題であり、国民の健康の維持ににとり看過できない重大な問題であると言えるでしょう。

 以上、歯科技工における問題点について述べましたが、わが国の歯科医療は歯科医師とそれを支える技工士を含めた医療スタッフがとても近い位置で綿密な意思の疎通を行い理想に近い形でチーム医療を実践することで独自の発展を遂げてきたと言えます。
また国民皆保険制度の下で医療を受ける国民も安価で高水準の医療サービスを受けることが出来ていました。しかし、近年の社会保障費の大幅な削減は国民の健康を支えてきた保険医療を健全に維持することができない事態に至っていると言えます。
 国民にとっては生命と健康の維持はまさに基本的な問題です。 歯科医療に関わる全ての専門職が誇りを持って医療に取り組める環境を取り戻す為にも、早急に抜本的な対策を講じる必要があることを強く訴えるものであります。


2006年10月19日
みんなの歯科ネットワーク 歯科技工士部門

 

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添付ファイル: file歯科技工における問題点と主張.pdf 3432件 [詳細] file歯科技工における問題点と主張  小島氏との面会に向けて.pdf 1410件 [詳細]

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Last-modified: 2008-03-16 (日) 16:44:53 (3331d)