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第170回国会 質問主意書・答弁書

質問主意書

質問第八〇号

診療報酬のオンライン請求の完全義務化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十月三十一日

辻   泰  弘   

       参議院議長 江 田 五 月 殿


   診療報酬のオンライン請求の完全義務化に関する質問主意書

 わが国の地域医療は、良質な医療提供に対する強い使命感を持った小規模な医療機関によって支えられてきたが、今日までの長年にわたる政府の医療費抑制策は、医療従事者を疲弊させ、地域医療崩壊の危機的状況をもたらした。

 このような状況の中で、政府は、診療報酬のオンライン請求の義務化を決定し、大規模な病院などでは平成二十年四月から、以降、その他の病院、医科及び歯科の診療所、調剤薬局においても、その電算化の状況に応じて順次始められ、原則として平成二十三年四月からは完全義務化されることとなっている。

 医療分野においても、社会情勢に応じたIT化は促進されるべきものであるが、地域医療の現状を十分に踏まえず、環境整備をなおざりにしたままに、診療報酬のオンライン請求の完全義務化を性急に進めることは、医療現場に混乱を引き起こし、地域医療の提供体制に大きな影響を与えかねない。

 性急な完全義務化の過程にあって、今まさに、地域医療の現場に求められる新たな投資と事務の負担増大により、診療の継続が不可能となる医療機関が生じようとしており、地域医療崩壊の加速が強く懸念される。

 このような観点から、以下質問する。






一 診療報酬のオンライン請求の義務化の対象となる病院、診療所、薬局の医科、歯科、調剤の中で、いわゆる「レセコン有」、「レセコン無」及び「レセコン無かつ少数該当かつ既設」の、それぞれの数及び療養の給付費額について、政府の把握状況を示されたい。

二 診療報酬のオンライン請求の義務化において、対象となる病院、診療所、薬局の医科、歯科、調剤の中で、いわゆる「レセコン無かつ少数該当かつ既設」については、平成二十三年四月一日から二年の範囲内で別に定める日からの義務化とされているが、この曖昧な表現が医療従事者に大きな不安を与えている。政府は、別に定める日をいかなる根拠で決定し、いつからとする方針なのか、また、それを定めるのはいつなのか、政府の見解を具体的に示されたい。

三 政府は、診療報酬のオンライン請求の完全義務化の決定の後、その実施に向けての各医療機関等を対象とした聞き取り調査、アンケート調査等を行い、地域医療の実情把握に取り組んできたのか。取り組んできたとすれば、その調査の結果はいかなるものであったのか。調査結果の内容と政府の把握状況を具体的に示されたい。

四 政府が、平成十八年度以降において、診療報酬のオンライン請求の完全義務化のために計上した予算及びその具体的な使途を示されたい。

五 日本医師会が平成二十年三月から四月にかけて行った「オンライン請求義務化への対応」に関するアンケート調査によれば、医科では、八・六%もの医療機関が「対応できないため廃院を考えている」と回答しており、完全義務化によって、診療の継続が不可能となる医療機関が生じ、地域医療の崩壊、ひいては、国民不安の増大を招くことが現実となりつつある。政府は右の調査結果をどのように受け止めているのか。この現状に対する新たな対応が求められているのではないか。政府の見解を明示されたい。

六 日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は、平成二十年十月の共同声明で、「レセプトオンライン請求の完全義務化を撤廃すること」、「レセプトオンライン請求は医療機関等の自主性に委ねること」を求めているが、これに対する政府の見解を示されたい。

七 医師法第十九条が「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と規定する一方で、請求手続の一態様を定めるものにすぎないとして、適正な診療報酬の請求において、オンライン請求を唯一の請求手段と義務づけ、従来通りの手書きによる診療報酬の請求を受け付けないとしたことは、正当な請求権を限定・制約するものであり、財産権の侵害に当たるものと考えるが、これに対する政府の見解を示されたい。

八 最高裁昭和五十年四月三十日大法廷判決(以下「判例」という。)に示されているように「財産権に対して加えられる規制が憲法二十九条二項にいう公共の福祉に適合するとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によって制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきもの」と考えられるが、オンライン請求を唯一の診療報酬の請求手段と決定する過程で、判例に即した比較考量は行われたのか、否か。事実関係を端的に示されたい。

九 診療報酬のオンライン請求の完全義務化とその具体的な期限などを、平成十八年四月十日の厚生労働省令第百十一号で規定したことは、国民生活に大きくかかわる重要課題を法律ではなく、国民の目に触れ難いところで決定したものであり、「立法府は公共の福祉に適合する限り財産権について規制を加えることができる」との判例に反するものと考えられる。省令にのみ依拠して、オンライン請求の完全義務化を強制することの法的妥当性、合理性について政府の見解を示されたい。

  右質問する。




答弁書

答弁書第八〇号

内閣参質一七〇第八〇号   平成二十年十一月十一日

内閣総理大臣 麻 生 太 郎   

       参議院議長 江 田 五 月 殿

参議院議員辻泰弘君提出診療報酬のオンライン請求の完全義務化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。






   参議院議員辻泰弘君提出診療報酬のオンライン請求の完全義務化に関する質問に対する答弁書

一について

 保険医療機関及び保険薬局(以下「保険医療機関等」という。)が行う電子情報処理組織の使用による診療報酬等の請求(以下「オンライン請求」という。)の義務化は、すべての保険医療機関等が対象となるものであるところ、平成二十年五月診療分について社会保険診療報酬支払基金が集計した結果によれば、レセプトコンピュータを使用して診療報酬等の請求を行った保険医療機関等の数は、医科の病院が八千七百八施設、医科の診療所が七万五千九百二施設、歯科の病院が千三百二十六施設、歯科の診療所が五万五千三百六十施設、薬局が四万七千六十施設である。一方、レセプトコンピュータを使用せずに診療報酬等の請求を行った保険医療機関等の数は、医科の病院が百二十三施設、医科の診療所が一万二千七百二十六施設、歯科の病院が三百三十二施設、歯科の診療所が一万四千百四十六施設、薬局が四千五百五十八施設である。  また、お尋ねの「レセコン無かつ少数該当かつ既設」については、レセプトコンピュータを使用していない保険医療機関等であって、年間の請求件数が、療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令(昭和五十一年厚生省令第三十六号。以下「請求省令」という。)附則第四条第一項の表中第七号及び第八号に規定する条件に該当するものを指すと考えられるが、これらの数については、現時点では把握していない。また、お尋ねの療養の給付費額についても把握していないが、平成十九年度における療養の給付費額を含む概算医療費は約三十三・四兆円である。

二について

 御指摘の「別に定める日」については、今後の保険医療機関等におけるオンライン請求の実施状況を勘案して決定することとしているが、その具体的な決定時期については未定である。

三について

 お尋ねについては、平成十八年度及び平成十九年度に高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部評価専門調査会医療評価委員会において、保険医療機関等を対象にアンケート調査を行っているが、例えば、レセプトオンライン化の効果に関する質問に対して、実際にオンライン請求を行っている保険医療機関等の約六割が職員の業務負荷の軽減につながったと回答しており、また、約三割が病院経営の改善につながったと回答している。

四について

 お尋ねについては、審査支払機関におけるレセプトのオンライン請求システムや歯科レセプト電算処理システムの開発に対する助成に要する経費などについて、平成十八年度に三十億四千二百四万九千円、平成十九年度に一億四千九百六十九万六千円、平成二十年度に十七億八千二十九万八千円の予算を計上している。

五について

 オンライン請求の義務化に当たっては、(1)オンライン請求の義務化に係る請求省令の改正規定の施行までの間に十分な準備期間を設けていること、(2)レセプトコンピュータを使用していない小規模な保険医療機関等においては、オンライン請求を行うためには一定の期間を要すると見込まれることから、オンライン請求の義務化後においても一定の猶予期間を設けていること、(3)事務代行者を介してのオンライン請求を認めていること等から、すべての保険医療機関等がオンライン請求の義務化に対応することは十分に可能であると考えている。

六について

 お尋ねについては、すべての保険医療機関等がオンライン請求を行うことによって、初めて医療保険事務全体の効率化を図ることが可能となるものであり、個別の保険医療機関等の判断にゆだねることは適当でないと考える。

七から九までについて

 お尋ねについては、先の答弁書(平成十九年十一月九日内閣参質一六八第四六号)三から五までについてでお答えしたとおりである。





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Last-modified: 2008-11-20 (木) 08:33:38 (3047d)