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平成二十一年一月十六日提出
質問第二六号


診療報酬オンライン請求に関する質問主意書

提出者  平岡秀夫




診療報酬オンライン請求に関する質問主意書

 二〇〇六年四月一〇日の厚生労働省令第一一一号の改正により、診療報酬オンライン請求は、二〇〇八年四月から段階的に施行、二〇一一年四月から医科歯科全てのレセプト(診療報酬明細書)が原則義務化される。この診療報酬オンライン請求導入に関しては、医療関係者から様々な不安、疑問が呈されている。よってこの件に関して質問する。

一 目的について

 1 診療報酬オンライン請求導入の目的は何か。政府は二〇〇六年一月、「IT戦略本部」が策定した「IT新改革戦略」において、診療報酬オンライン請求導入の目的について「医療の情報化を通じて集積される診療情報、検診結果及び診療報酬請求データ等の健康情報を有効に活用」し、「医療の情報化の促進により事務管理経費を削減し、医療費の適正化を進める必要がある」と述べているが、その目的は医療費の抑制ではないか。

 2 二〇〇六年六月に成立した「医療改革関連法」で打ち出された、「医療費適正化計画」、「医療保険制度の都道府県単位化」、「特定健診・特定保健指導」、より詳細な「医療機能情報」の提供、地域ごと、年齢ごとの「新診療報酬体系への効率的な対応」、「指導・監査、立入検査等への効率的な活用」、「保険者機能の強化」などの課題と、本件の診療報酬オンライン請求導入とは、どのような関連性があるのか。

二 法的問題について

 1 オンライン方式による診療報酬請求義務化は、―樵以式の全廃と新方式への移行、⇒瑛輯間以外の救済規定がない、F段免駘冑蘆瓦鉾爾β綵措置がないことなど、健康保険法第七十六条第六項の「費用の請求に関して必要な事項を定める」という一般的な委任の範囲を超えている可能性があるのではないか。国民に対して新たな権利義務が発生する事項を定めるには、単なる省令改正ではなく、国家行政組織法第十二条により法律の特別な委任が必要となるのではないか。

 2 国民皆保険のもとで保険診療を行えば、保険給付に対する請求権が発生する。その請求方式をオンライン方式にのみ限定(可搬型の電子媒体も排除)することは、請求権の侵害にあたる可能性があるのではないか。

三 導入について

 1 IT化をすすめる周辺環境の整備が不十分な現状で、診療報酬オンライン請求を強制的に導入すれば、長年にわたり地域医療を支えてきた保険医療機関の存続や、医療の安全確保、良質な医療の提供にも大きな影響を及ぼすことになると思われるが、その影響をどのように考えるか。

 2 医科医療機関の二〇%、歯科医療機関の三〇%を超える、手書きでレセプトを提出している保険医療機関は、オンライン方式による診療報酬請求義務化にともない、新たなレセプトコンピュータの購入などの対応を講じなければならない。オンライン方式による診療報酬請求への対応が極めて困難な医療機関に関して、請求代行制度が規定されているが、その実施要項などの詳細がいまだ不明であり、同制度の利用も困難な場合、廃業に至るしかないと思われる。この影響をどのように考えるのか。

 3 以上を考えると、個々の医療機関の実情に応じた柔軟な対応が必要であり、一律にオンライン方式による診療報酬請求を義務化するべきではないのではないか、また、これを定めた厚生労働省令第一一一号は改正すべきではないか。

 4 十分な財政手当てのない状況でのオンライン請求義務化は、法律に基づかない義務の賦課のみならず財産権の侵害にもあたるのではないか。

四 データの利用について

 1 政府は「骨太方針二〇〇六」の中で、「IT新改革戦略」の推進と並べて、「社会保障番号の導入など社会保障給付の重複調整という視点からの改革」、「社会保障個人会計(仮称)」の検討を打ち出している。国民の長年にわたる運動によって権利として保障された社会保障による諸給付を重複調整しようとして、診療報酬請求データが使われることはないのか。

 2 国によるデータの利活用について、最もデリケートな健康に関わる個人情報である点や、IT化という新たな展開を踏まえ、利用目的や方法などを限定して、無制限に使うべきものではないことを法令上に明記するべきではないか。

 3 すべての診療報酬請求データを集積して、全国規模のナショナルデータベースを構築することは、診療報酬請求書及び明細書の使用目的の拡大にあたるものである。従って、その是非について十分検討する必要があると思われるが、診療報酬請求データの営利目的による利用、及び民間企業による利用は、明確に禁止するべきではないか。

 4 診療報酬請求データと「特定健診」データとを突き合わせ・分析し、患者の同意なしに特定保健指導等に使おうとすることは、医療費データの分析の枠を超え、国民のプライバシー権や受療権を侵害するものではないか。診療報酬請求データと「特定健診」データとの突き合わせ・分析は禁止するべきではないか。

 5 診療報酬請求データは診療録データと同等に、最もデリケートな健康に関わる個人情報である以上、データの送受信・集積管理することについての秘密保持、安全性確保が必要である。全診療報酬を集積したデータベースは、患者の個人情報の利用範囲を明確にし、データの保存期間も明確化すべきではないか。

五 その他について

 1 個々の患者に対する治療内容や医師の判断をよそに、診療報酬請求書・明細書の項目のみをコード化、数量化し、経年的なデータの集積・分析を容易にすることは、コンピュータによる画一的な審査・判断が拡大する可能性を高くすると思われる。保険診療は「医学的判断」や「患者の個別性」を何よりも重視して行われるべきであり、患者一人ひとりの診断・治療における医師・歯科医師の判断など、全人的医療に基づいて妥当、適切と判断して行われたものを、画一的な審査基準に基づきコンピュータにより審査、評価を行うようなシステムの導入は問題ではないか。

 2 韓国のように、診療報酬オンライン請求が義務化され、さらに将来混合診療が解禁されれば、コンピュータ審査を利用することで、いかようにも保険診療の範囲を狭め、医療費を削減することが可能となる。既に韓国で実施されているこの医療費削減方式は世界に冠たる我が国の国民皆保険制度を崩壊に導くものとなるのではないか。

 右質問する。



平成二十一年一月二十七日受領 答弁第二六号

  内閣衆質一七一第二六号   平成二十一年一月二十七日

内閣総理大臣 麻生太郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員平岡秀夫君提出診療報酬オンライン請求に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


衆議院議員平岡秀夫君提出診療報酬オンライン請求に関する質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねの保険医療機関及び保険薬局(以下「保険医療機関等」という。)が行う電子情報処理組織の使用による診療報酬等の請求(以下「オンライン請求」という。)については、御指摘の「IT新改革戦略」において、「遅くとも二〇一一年度当初までに、レセプトの完全オンライン化により医療保険事務のコストを大幅に削減するとともに、レセプトのデータベース化とその疫学的活用により予防医療等を推進し、国民医療費を適正化する。」ことを目標として掲げており、御指摘のように医療費の抑制を目的として導入するものではない。

一の2について

 オンライン請求については、療養の給付に関する費用の請求に関する手続の一態様として導入したものであり、御指摘の課題との直接的な関連性はない。

二の1について

 オンライン請求の導入については、療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令(昭和五十一年厚生省令第三十六号。以下「請求省令」という。)において、療養の給付に関する費用の請求に関する手続の一態様として定めたものであり、これは、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第七十六条第六項の規定に基づく委任の範囲を超えるものではない。

二の2及び三の4について

 健康保険法上、保険医療機関等が療養の給付等に係る診療報酬等の請求を行う場合には、請求省令で定める手続に従って行うこととしており、オンライン請求の導入は、その手続の一態様を定めるものであることから、これが請求権や財産権の侵害に当たるとは考えていない。

三の1から3までについて

 オンライン請求の導入に当たっては、(1)オンライン請求の導入に係る請求省令の改正規定の施行までの間に十分な準備期間を設けていること、(2)レセプトコンピュータを使用していない小規模な保険医療機関等においては、オンライン請求を行うためには一定の期間を要すると見込まれることから、オンライン請求の導入の決定後においても一定の猶予期間を設けていること、(3)事務代行者を介してのオンライン請求を認めていること等から、すべての保険医療機関等がオンライン請求に対応することは十分に可能であると考えている。

四の1について

 オンライン請求の導入は、御指摘の社会保障制度の諸給付の重複調整を行うことを目的としたものではないが、診療報酬明細書等に係るデータについては、既に健康保険法等の規定に基づく併給調整等を行うために利用されているところである。

四の2、3及び5について

 国がオンライン請求に係るデータを収集する際には、患者の氏名、生年月日等の個人情報を匿名化するなど、患者個人が特定されないよう配慮することとしている。また、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)の趣旨を踏まえ、当該データを適切に利用することとしており、御指摘のような事項について法令に明記する必要はないものと考える。  また、国が構築する「レセプト情報・特定健診情報等データベースシステム(仮称)」に蓄積されるデータについては、その性質上、慎重に取り扱うべきものであるという基本的な認識の下、現在、当該データの利用者、利用範囲及び保存期間等について検討中である。

四の4について

 厚生労働省としては、医療保険の保険者が自ら保有するオンライン請求に係るデータと特定健康診査及び特定保健指導に係るデータを突き合わせて分析することは、保険者の通常業務の範囲内と考えられるものであり、これを禁止する必要はないものと考えているが、これらのデータについては、その性質上、慎重な取扱いが求められることから、保険者に対し、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)、「健康保険組合等における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」等を遵守するよう指導しているところである。

五の1について

 診療報酬明細書の審査については、医師等が、その医学的知見等を踏まえ、個々の事例について総合的に判断することにより行っているものであり、御指摘のように画一的な審査基準に基づきコンピュータにより行っているものではない。

五の2について

 一の1についてで述べたとおり、オンライン請求の導入については、医療費の抑制を目的としているものではなく、御指摘のように国民皆保険制度を崩壊に導くものではない。




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Last-modified: 2009-02-04 (水) 12:20:41 (2968d)