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日本の医療制度改革の方向 !

日本経済研究センター理事

八代尚宏(やしろ なおひろ)

経済学者、経済評論家。
国際基督教大学教養学部社会科学科教授。
専門は労働経済学、法と経済学、経済政策。
内閣府経済財政諮問会議議員。


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もとのURLは
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/healthcare/pfizer_forum/2002/documents/forum67.pdf


お時間があれば、続いて、「より悪い医療制度」にしないために(二木立) を読んでみてください。



八代尚宏(やしろ・なおひろ)先生プロフィール

社団法人日本経済研究センター理事長

1946 年(昭和21 年)生まれ。ICU 教養学部・東京大学経済学部卒業。米国メリーランド大学経済学博士。

1981 年、経済企画庁(現内閣府)入庁後、OECD 事務局経済統計局主任エコノミスト、総合計各局計画官などを経て、1992 年より上智 大学国際関係研究所教授。2000 年10 月より日本経済研究センター理事長。総合規制改革会議、日本労使関係学会などの委員を歴任。

主な著書に「日本的雇用慣行の経済学」、「少子・高齢化の経済学」、「雇用改革の時代」、編著に「The Economic Effects of Aging in the United States and Japan」「社会的規制の経済分析」など。

ファイザーフォーラム

21世紀の保健医療を考える

No.67


ご意見の要旨 !

●日本の医療制度は、国民皆保険制度の下で需要面は 社会化、供給面は開業自由の原則で市場化されてい る。出来高払いで供給が需要をつくるメカニズムが 存在し、矛盾が拡大している。

●医療改革が必要な理由は、第一に経済社会環境変化 への対応で、疾病構造の変化や技術革新に伴う多様 なニーズに応えるためには、供給者本位から利用者 本位への転換が急務となる。

●最大の問題点は医療保険財政だが、財政面からのみ 考えるのは誤りで、医療改革の本来の目的である 「医療の質を向上させる」ことによって、医療費を合 理化することが大切である。

●まず行うことは診療報酬の改革であり、出来高払い は包括払いに転換すべきである。低コストで効率よ く病気を治すほど病院が潤う仕組みに変えることが、 究極の医療費抑制策となる。

●改革の第二は保険者機能の強化である。保険者は患 者に代わって医療機関との交渉力を持つ存在になる べきである。また患者側には保険者を選ぶ自由を与 え、保険者間の競争を促す。

●改革の第三は、公民ミックスによる医療サービスの 提供である。一定の基礎的医療は低い自己負担で公 的にカバーし、それ以上は民間に委ねてコストに見 合う支払いを求めるべきだ。

●公的医療保険と民間の医療保険の役割分担を行わな い限り、医療は財政の一分野であり続け、財源が不 足すれば医療も発展できない。医療をサービス産業 として位置づける必要がある。

●改革の第四の方向は、競争の促進である。参入規制 を撤廃し自由な競争を促すことで、質の悪い病院が 淘汰され、質のよいサービスが提供される結果にな るのではないか。

医療制度改革の目的は医療の質の向上にある !

現在の日本の医療制度は、国民皆保険制度 の下で需要面は社会化されているが、供給面 は開業自由の原則で市場化されている。また、 出来高払いの診療報酬体系によって供給が需 要をつくるメカニズムが存在し、この結果生 じる医療費の膨張を政府の価格統制によって 抑制している。この仕組みはこれまでは何と か機能してきたが、人口高齢化に伴い矛盾が 拡大している。日本の平均寿命は世界一で、 その割に医療費は少ないから医療システムは 効率的だという説もあるが、高齢人口が少な い間は維持できたシステムも、今後の高齢社 会には対応できない。

医療改革が必要となる理由は、第一に経済 社会環境が変化していることである。人々が 豊かになり、高齢人口が増加し、疾病構造が 変わっている。IT 技術が発展し、医療の技術 革新が進みニーズが多様化している。国民皆 保険によって画一的な医療サービスを保証し なければならないという時代から状況は変わ っている。この結果、供給者本位から利用者 本位のシステムへの転換が急務となっている。 現在、最大の問題点となっているのは医療 保険財政であるが、財政面からのみ医療問題 を考えるのは誤りである。医療改革の本来の 目的は医療の質を向上させることにあり、そ れを通じて医療費を合理化することが大切で ある。そのためには公的保険と私的保険の役 割分担が必要で、公的保険のみですべての医 療をカバーすることには限界がある。さらに 保険者機能の強化と、高齢者医療では福祉と の連携が求められる。

今回の医療保険財政改革で診療報酬が改定 されたが、単価を下げても量が増えて医療費 の総額は変わらない可能性もある。図1は医療 保険制度の改革が財政に与える影響を日本経 済研究センターが試算した結果だが、もっと も効果が大きいのは老人保健制度の対象年齢 を70歳から75歳に引き上げること、および保 険料の引き上げである。診療報酬改定の効果、 自己負担引き上げの効果はそれほど大きくな い。今回の改革による医療保険財政の改善効 果は一時的なもので、せいぜい5〜10 年間し かもたないと見られ、時間かせぎをする間に 抜本的な改革を実行しなければならない。ま た、保険別にみると、今回の改革はもっぱら 政管・組合健保の救済策で、国保に対する対 策はほとんど講じられていない。政管・組合 健保が改善するのは、主に老人医療の範囲が 縮小して拠出金が減るためだが、国保は逆に 70 歳から74 歳の人口を新たに抱えることにな って若干マイナスになると考えられる(図2)。

改革の柱は包括払いと保険者機能の強化 !

医療保険制度改革で第一に行うべきは診療 報酬の改革であり、現行の出来高払いを包括 払いに転換すべきである。出来高払い方式で は過剰診療や過剰検査へのインセンティブが 大きく、コストをかけるほど収入が増える。 インセンティブを逆転させ、コストをかけず に効率よく病気を治すほど病院が潤う仕組み に変えなければならず、これこそが究極の医 療費抑制策といえる。

包括払いの実現に向け疾病を標準化するた めにはIT 化が前提となるが、まずレセプトを 電子化して集積し、分析することが必要であ る。現在は医療機関がレセプトの情報を紙に 打ち出して運び、診療報酬支払い基金がチェ ックし、次に保険者がデータに打ち込んでま たチェックするという非効率的な作業に膨大 な費用がかかっている。レセプトを医療機関 から直接電子メールで保険者に送り、保険者 がチェックして問題がなければそのまま支払 い、問題が生じたものだけを診療報酬支払基 金が裁定すればよい。また、レセプトと電子 カルテのコードを統一し、医師がカルテに記 入すると自動的にレセプトにデータが入力さ れるようになるのが理想的である。

一方、今の保険診療はあまりにも画一的で、 医療の質の違いが考慮されていない。病院と 診療所がまったく同じ報酬というのは疑問で あり、設備の高い病院はそれだけ高い診療報 酬を得てよいはずである。診療報酬の改革に は質の違いの観点も必要である。

改革の第二は保険者機能の強化である。保 険者は患者に代わって医療機関との交渉力を 持つ存在として、その機能を確立すべきでは ないだろうか。レセプトの一次審査権の回復 は、今回の規制改革3カ年計画である程度認め られた。さらには、保険者が判断して質のよ いサービスを提供する病院と個別契約して患 者を送るようにできることを目指す。もっと も、患者の病院選択は自由だが、他の病院に 行く場合は自己負担の上乗せを求めるような 考え方もある。零細な保険者は民間の保険会 社に業務委託し、保険会社が代わりに医療機 関と交渉できるようにする。また患者側には 保険者を選ぶ自由も与えるべきで、それによ って保険者間の競争が強まると考えられる。

サービス産業としての医療を公民ミックスで提供 !

改革の第三は、公民ミックスによる医療サ ービスの提供である。現在の「医療=保険医 療」のシステムは、すべての人にベストの医 療を公平に配分するという、非現実的な立場 をとっている。一定の基礎的医療は低い自己 負担で公的にカバーするが、それ以上の医療 は民間に委ね、コストに見合う支払いを求め るべきである。

現在、原則として保険診療と自由診療の混 合診療が禁止され、保険外の医療を行うと最 初からすべてを自由診療にしなければいけな い。保険診療の規制は非常に硬直的で、標準 として定められている範囲が実情に合わない 場合がある。標準以上の医療を行った場合、 その部分だけを患者の自己負担とすることが できないのは大きな問題である。

公的医療保険と民間の医療保険の役割分担 を行わない限り、医療は財政の一分野であり 続け、財源が不足すれば医療も発展できない。 医療をサービス産業として位置づける必要が ある。ただし特殊なサービス産業であるから 一定限度までは公的に確実に保障する。それ 以上については医療費がどんなに増えようと、 医療が産業であり患者が民間保険で任意に支 払う限り問題は少ない。

改革の第四の方向は、医療分野における競 争の促進である。利用者主体の医療サービス を実現するためには、事業者(病院)間の競 争が不可欠であるが、現在は医療における競 争はよくないこととされ、病院経営に株式会 社は参入できない。医療の質の確保は事業者 の倫理や善意に依存している。むしろ参入規 制を撤廃し自由な競争を促すことで、質の悪 い病院が淘汰され、質のよいサービスが提供 される結果を生む。医療に株式会社の参入を 認めるともうけ主義に走るという批判がある が、株式会社の参入とは資本調達を自由化す ることで、現在の医療法人が株式を発行して もよいのである。株式会社問題は非常に誤解 されており、もうけ主義の是非という倫理面 で議論されているが、実は資本調達の問題に すぎない。もうけ主義を防ぐもっともよい方 法が病院間の競争である。他の業界では質の よいサービスを安く提供する企業が利益を挙 げてきた。これは医療の世界にも通じること ではないかと思う。







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Last-modified: 2007-06-06 (水) 08:08:21 (3616d)