Top / 保険歯科医療が内在する職種間の構造的問題

日本での医療は国民皆保険であり社会保障の範疇に会ります。 歯科医療においては過去のキンパラ差額問題から発したと言われる、自費診療と保険診療の並存、実質的には混合診療と言える状況を認定し、導入した事から患者さん国民の中ではネガティブなイメージが熟成定着し、一方で憲法25条で保証された権利を保障するセーフティネットである医療の役割を担う重要性が曖昧且つ忘れられたものとなっていきました。

高度成長期、バブルからバブルの終焉、そして今に至る小泉構造改革まで国民医療保険制度としての歯科医療はセーフティネットとしての役割を果たしながらも、その経営基盤や就労環境は省みられない侭でした。 歯科医療関係者が高額所得者と見られるようになったのは、社会保障制度のセーフティネットとしての役割によるものではなく、自費診療と呼ばれる保険外収入によるものである事、患者さんや国民の目からはただ高額で歯科医師は儲かる職業だという認識しか生み出さなかったことに理由があります。 本来、歯科医療の診療内容が進歩していけば、かかる経費や投資は増えて行き、それがまた良い保険診療となって患者さんに還元されるべきでありました。 しかし、国による保健医療制度に於いてはその部分の進歩や投資、還元と言ったサイクルは最初から無視されてきたか逆に押さえられる、押さえつけるべきものと判断されてきたようです。 結果、保険診療では多くの歯科医師自身が患者さんに提供できる最善の医療を提供する事も、自身の判断で治療にあたる事も出来なくなっています。 そのような抑圧され歪んだ制度基盤の中で、歯科医療業界が今日まで永らえてこれた理由は、先にあげた自費診療を並存する事を認めた国の思惑に大きな理由があると思われます。 当然、その思惑の中には過酷な労働環境低収入にあえぐ歯科技工士の存在を無視する事も含まれていました。 保険診療も自費診療も国民の健康や生活に付与する医療的又基礎的な実態を価値としてみればまったく同じ物です。 本来差をつけるべきではないベーシックな部分はどのような立場の患者さんに対しても公平であるべきなのです。 だからこその社会保障であり医療が保険で賄われてきた理由です。 ところが、歯科ではそのベーシックな部分の経費負担すら国は保険からの支払いを躊躇し、自由裁量の名のもと差額徴収自費診療を認めたわけです。

歯科医療を受ける側に差額を負担できる基盤とマーケットがあれば、このような制度は問題なく続ける事が出来たのでしょうが、国家の責任放棄と実質的な国民負担増である事が国民の目からは意図的に隠され理解されなくなっていきました。 生活文化の向上と審美意識の高まりも自費診療を容認しつつも、歯科は高いしトラブルも多いと言うイメージを国民に植え付けてきました。 本来、国民が望んだものであったにもかかわらずにです。 歯科医療提供者には、本来のセーフティネットとしての歯科医診療を維持提供して行こうとする努力と共に、患者さんの要求にこたえなければならないと言う2重の負担が掛かってきたわけですが、抑制され低下して行く保険点数という現実の中では、相反する要求にこたえられなくなっていきます。 これらの過程で、自費診療の幻想が歯科医師にも生まれ、本来なら差額と言うものは基礎となるべき良質な医療の上に提供されるべきものである事を忘れ、保険収入の低下を補填するものであるかのように思い込み、保健医療で保証された基盤を基にして、更に良質な品質を保証し提供するものであることを忘れてしまう状況を生み出しました。

このような状況の中で忘れてはならないのが、歯科技工士の存在であります。 歯科医療と歯科技工とは渾然一体不可分のものであり、分け隔てするべき事象ではありません。 私の手元にある「木床義歯の文化史 新藤恵久薯」では、西洋的な医学から発展した歯科と違い、日本独自の木床義歯創造の背景から説き起こし、日本古来の職人芸が現在の歯科医療に繋がるまでを検証しております。 私が学んできた歯科史の中にも技工は歯科医師が行っており、後に歯科技工士を名乗る先人達も直接に歯科医師に奉公するなどしてその技術を学び確立してまいったわけです。 そして今現在も技工に取り組む歯科医師自身が多数居られる事からも、技工の行為は医療そのものであることは明確な事だと思います。

この事実が何故に歪められ否定されてきたのかを、我々歯科医療に携わる全員が再考しなければならない時期にきていると思います。 これに置きましては、異論反論もおありでしょうが、歯科医療業界内部での対立や相互不理解、利害の相反が、国が営む社会保障制度の中でどのように醸し出され、どのような効果や影響を与えてきたかを検証して行けば自ずと明らかになると思います。




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Last-modified: 2008-03-16 (日) 16:46:04 (3559d)